あたかも陸地に点在する町のような存在として、長きに渡り人々に豊かな恵みを与え続けている瀬戸内海の島々。が、近年は高齢化や過疎化が進み、多くの島々は活力を失い“離島”と呼ばれるようになってしまっています。そこで人々が省みなくなった海や島々に、もう一度新たな息吹きを起こそうと、2010年から始まったのが瀬戸内国際芸術祭です。3年に一度のトリエンナーレ形式で、今年は第３回目の開催となります。

高松の高台から見る瀬戸内海の島々

第一回瀬戸内国際芸術祭には、18の国と地域から75組のアーティストとプロジェクトが参加。105日間の開催期間中に約94万人もの人が訪れました。そして今回も直島、豊島、小豆島、犬島、男木島などを舞台に世界各国からアーティストが参加、見どころのある作品も盛りだくさんです。

林舜龍（リン・シュンロン）「国境を越えて・海」Photo:Yasushi Ichikawa

アーティストたちは島の生活の成り立ちや集落の発生、そこでの相互扶助の仕組みなどの特徴をそれぞれの感性で作品に表わしています。芸術祭は春・夏・秋の3シーズンに渡って開催され、瀬戸内海に浮かぶ12の島と2つの港が会場となります。アート・アイランドとして既に世界的にも知られる直島の名所、安藤忠雄設計の地中美術館や草間彌生のオブジェなども、この機会にめぐってみるといいのではないでしょうか。

山口啓介「歩く方舟」撮影：高橋公人

王文志（ワン・ウェンチー）「オリーブの夢」Photo: Yasushi Ichikawa

平尾成志×瀬ト内工芸ズ。/香川県盆栽生産振興協議会「feel feel BONSAI」Photo:Shintaro Miyawaki

島から島へ海を渡ってアートをめぐる。考えてみれば、美術を愛し人との出会いを楽しむ人々にとって、これほど贅沢な旅はありません。目的地まで船で行く心の高まりは、街中の美術館に出かける時には得られないものです。そして訪れる各島が、それぞれまったく違った雰囲気を持つことにも驚かされるでしょう。この夏、または秋に、瀬戸内の海にアートと出会いにでかけてみてはいかがでしょうか？さまざまな作品を通して伝わってくる島の文化も、新たな発見を与えてくれるはずです。

いろいろな島に展示されているアート作品を観るために、フェリーで瀬戸内の海を渡るその過程も楽しいのです。

●瀬戸内国際芸術祭2016
夏2016年7月18日（月・海の日）～9月4日（日）
秋2016年10月8日（土）～11月6日（日）
http://setouchi-artfest.jp/