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Natural Spot
2016-05-27
自然とともに暮らす
「写真集食堂めぐたま」の“おうちごはん”が生む温かい時間

美術館やギャラリーも多く、若者に人気の街・恵比寿。駅西口から徒歩10分ほどの場所に現れるピンクのオーニングとガラス張りの店『写真集食堂めぐたま』は、その名の通り、店内の壁一面に備え付けられた本棚に、たくさんの写真集が並んでいます。これらはすべて著名な写真評論家・飯沢耕太郎さんのコレクション。実はここ、飯沢さんと、そのパートナーでアーティストのときたまさん、料理好きのおかどめぐみこさんの3人が2014年2月にオープンした食堂。飯沢さんのコレクションでもある5000冊の写真集を眺めながら、おかどさんのつくる食事を味わい、週末にはときたまさんが企画するイベントを楽しむことができる場となっています。

1左から、ときたまさん、飯沢耕太郎さん、おかどめぐみこさん。

入り口から奥に向かって年代順・作家別に並んでいるという写真集は、海外の大型本や年代物の貴重な作品も多く、すべて自由に閲覧できるため、写真好きにはたまらない場所。「写真集は歴史、文化、動物、人物、ファッションなどさまざまなジャンルのものがあって、どんな人でも必ず好きなものが見つけられる。改めて写真の力ってすごいなあと気づかされています。また写真集目当ての人だけでなく、近所の人が子供連れでふらりと来ることも多い。いろんな人が気軽に集まれる場所になっているのも嬉しいですね」と、ときたまさん。全面開放が可能な大きな窓から自然光と風が入り込む、やわらかな木の風合いの空間自体が抜群の心地よさ。そして何より「日本のおうちごはん」がコンセプトの食事が美味しいと評判なのです。

2インテリアデザインは「ザ・ペニンシュラ東京」の内装を手がけた橋本夕紀夫さんによるもの。子供連れもOKなので、若いお母さんたちがここで子供と写真集を眺めながらゆっくり過ごすことも多いそうです。

厨房を仕切っているのは、ときたまさんの10年来の友人でもあり、以前、上野広小路でご飯屋さんを手掛けていたおかどさん。「日本の家庭料理って、和食だけじゃなくてイタリアンでも中華でも何でもあるでしょ。だからメニューには何でも取り入れています。またオーガニックにこだわっているわけでもありません。もちろん身体にいい素材を選んでいますが、コンセプトは“おうちで食べるごはん”なので、ある意味こだわりがないのがこだわり。美味しいものだったら何でもいいんです」

ストイック過ぎず、あくまで自然体。遊びに訪れた友人の家のお母さんが作ってくれるような和やかな雰囲気の食事が、多くの人に支持されています。

人気があるのは山菜や筍など旬の素材をふんだんに使った料理が日替りで食べられる一汁三菜あるいは一汁五菜の定食。全国各地のおかどさんやときたまさんの知り合いから届く旬の食材が使われ、それによってメニューが決まります。ディナータイムも一品料理やお酒だけでなく、晩ご飯のセットが用意されています。

3「季節の一汁三菜ランチ」。旬の素材が使われた人気の定食は必ず一度は食べてみたい。身体に染み入る優しい味付け。

また明治時代の人気作家・村井弦斎が書いた小説の中のレシピを再現したメニューもこの店の特徴です。「村井弦斎は家庭のごはんが重要であると唱えていた人で、彼の『食道楽』という恋愛小説の中に出て来る料理を再現しています」。ワサビが効いて涙が出て来ることからその名前が付いた「泣きご飯(茶碗鮨)」や、蒸しパンのような素朴な味の「糠ケーキ」がそれです。出汁の上にスフレ状になった卵と黒胡椒をのせた江戸時代の高級スープ「卵ふわふわ」なども、是非一度食べてみたい逸品です。

4明治時代の作家・村井弦斎の『食道楽』に出てくるレシピを再現したメニュー。上の写真は「泣きご飯(茶碗鮨)」。
5「村井弦斎の糠ケーキ」
6「江戸名物 卵ふわふわ」

他にもジンジャーエールや紫蘇ジュース、ロールケーキなど、手作りのオリジナルのメニューが盛りだくさん。料理を作るスタッフの平均年齢は50~60代の女性が中心で、時おり穏やかな笑い声が店内に響き、ホッとした気分に。誰もが温かい気持ちになれる食事の時間とはどんなものか、ここに来ればきっとわかります。

7店内の壁を埋め尽くす写真集は飯沢さんが学生時代から30年に渡って集めたもの。毎月写真に関連するイベントも行われています。

●めぐたま食堂
東京都渋谷区東3-2-7 Tel.03-6805-1838
営業:平日11時30分~23時(L.O.22時) 土日祭日12時~22時(L.O.21時)
月曜定休(月曜日が祭日の場合、火曜日が休みとなります)
http://megutama.com