コロラド スプリングスからI-25をひたすら南へ走ること約4時間。ニュー メキシコ州北部のロッキー山脈の中央に位置する大好きな街サンタフェは、アメリカで最も古い街のひとつでもあり、歴史、文化、自然が不思議な融合を見せる魅惑の地だ。
サンタフェには不思議な空気が流れている、街に足を踏み入れた瞬間、誰もがすぐに独特な雰囲気が感じ取るに違いない。一番最初に目に飛び込むのは、きっと「アドベ Adobe」と呼ばれる、土と藁を固めた日乾煉瓦で作られている建築物の街並み。アドベ建築は、熱を吸収してから非常にゆっくりと放出するため、建築物の内部は涼しいままに保たれ、暑くて乾いたこの辺りの気候に適しているのだそうだ。
数千年におよぶネイティブアメリカンの長い歴史と独自のカルチャーが色濃く残り、加えて17世紀初頭から始まるスペイン統治時代の文化、それに続くメキシコ文化、そして大西部開拓者のカウボーイカルチャーや現代アートなど、多様な文化やそれらの融合などを楽しめるのも魅力だ。
サンタフェの中心エリアにあるモダンなアドベ建築風のホテル『Inn and Spa at Loretto』にチェックインを済ませ、ダウンタウン周辺のランドマークとも言える教会をめぐる。まずはプラザからすぐの古い教会『アッシジ聖フランシス バシリカ大聖堂The Cathedral Basilica of St. Francis of Assisi』へ。大都市にある教会と違い、サンタフェらしいこじんまりとした静かで美しい教会。1869年にサンタフェ最初のフランス人大司教によって建てられたという。ヨーロッパ調のロマネスク様式建築で、中にはアメリカで最も古い聖母マリア像が置かれている。
次に訪れたのは1837年代に建てられたゴシック建築の『ロレット教会Loretto Chapel』。小さな教会で、礼拝堂の中二階に聖歌隊の席が設けられていたため、その昔、修道女達はハシゴを使って上り下りしなければならなかった。彼女たちはこれを嫌がり、聖ヨセフに祈りを捧げた。すると9日目に白髪の男が現れ、支柱のない螺旋階段を造ったのだという。美しく完璧な螺旋階段は今もそのままの姿で残っている。この話はあくまでも伝説だが、この階段は「奇跡の螺旋階段」と呼ばれている。
教会を出て街を歩いているとルート66の標識を発見。アメリカのど真ん中を走る、まさにメインロード。かつてはシカゴからロサンゼルスのサンタモニカまでを横断するのに欠かせなかった旧国道線ルート66が、このサンタフェの街を横断している。アメリカの歴史を語る古い街と古い道のつながりがみえる、ちょっとした発見だ。
博物館、美術館もたくさんある。今回は初めて『ジョージア・オキーフ美術館 Georgia O’Keeffe Museum』を訪れてみた。キャンバスいっぱいに描かれた花の絵などで知られるジョージア・オキーフは、自然を愛し、独特な視点で描いた美しい作品を数々残した20世紀のアメリカを代表する女性画家だ。彼女が晩年を過ごしたニューメキシコの家は、シンプルライフのお手本となるような魅力がたくさん詰まっている。生涯自分の生き方を貫いたオキーフが描く作品の色使いは、どれも優しくて暖かみがある。吸い込まれるような絵画の数々を眺めていると、あっという間に時間が経ってしまう。
ユニークなメキシカン風カフェやレストランが多いのもサンタフェの楽しいところ。ニューメキシコスタイルにアレンジされたタコスやグリーンチリを使った料理など、テックスメックスとは一味違ったサンタフェならではの味があちらこちらで楽しめる。
ふらふらと散歩しているだけでも楽しいキャニオンロードには、ショップや小さなギャラリーが100軒以上立ち並ぶ。街中にあふれる独特なオブジェを眺めながら、気軽にギャラリーをはしごする。ふと立ち寄ったショップやギャラリーのオーナーやアーティスト達とサンタフェの歴史やカルチャーのおしゃべりをしたりするのもひとつの楽しみ方だ。
ダウンタウンのプラザ周辺にもあらゆる種類のショップが立ち並ぶ。プラザを囲むように広がる色とりどりのマーケット。中でも気になるのが、ネイティブアメリカンの人々が売っているシルバーやターコイズのインディアンジュエリーの数々。彼らしか作ることのできない独特なジュエリーは、色も鮮やかでデザインもユニークなものばかり。一期一会の出会いがここにあるかもしれない。
歴史と文化に彩られた異国情緒溢れるサンタフェは、小さな街だけれど、何度訪れても常に新たな発見や感動を見つけられる魅惑の地。観光客をあたたかく迎えてくれる街でもあるので、アメリカのミッドウエスト・エリアを旅する機会があったら、ぜひ訪れてみてください。