Colorado:コロラド
2016-06-14
白い帽子とサンダーバーズ、まるで映画のような卒業式

卒業式シーズン到来のコロラドより、今年、一番ホットな大学の卒業式の話題をひとつ。アメリカでは通常、5月中旬から6月初旬にかけて行われる大学の卒業式。著名人が訪れ卒業生へ向けて貴重なスピーチが贈られるなど、全国各地で感動的なセレモニーが催される。なかでも今年コロラドで注目を集めたのは、なんと言っても空軍士官学校(United States Air Force Academy)の卒業式。空軍士官学校とは、アメリカの空軍による士官候補生を養成するための教育機関だ。

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アメリカ国内には、こういった軍が主体となった特別な士官学校が3つある。コロラド州コロラドスプリングスには空軍士官学校、ニューヨーク州ウェストポイントには陸軍士官学校(United States Military Academy)、メリーランド州アナポリスには海軍兵学校(United States Naval Academy)があり、いずれも映画の舞台になっているほど有名だ。国立の軍学校とあって、入学試験の倍率も高く、身体能力のみならず、精神力、学業においても優秀なエリートたちが集まる。学費、寮費、食費はすべて国が負担してくれるのはもちろん、厳しい訓練や試験をクリアし卒業した士官学生たちは、その後、階級を与えられ、軍で働くことが約束される。

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空軍士官学校には、4年制の大学教育プログラムがあり、ブートキャンプという基礎訓練から始まり、正規士官となるために必要な能力や、リーダーシップを発揮するために求められる知識や精神も習得する。戦場を想定したサバイバル訓練や格闘訓練ももちろんあるが、基本的なカリキュラムには科学、工学、社会科学、人文科学のコースが含まれている。

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士官候補生は、バラック(barrack)と呼ばれる学生寮で毎日、規則正しい生活をおくる。また、アメリカらしく敷地内にはカデットチャペル(Cadet Chapel)という教会があり、あらゆる宗教に対応できるようなっている礼拝堂には、仏教徒、カトリック教徒、ユダヤ教徒、プロテスタント教徒、イスラム教徒用にわけられた礼拝室がある。個性的な外観をした教会なので、観光名所でもありランドマークにもなっているほどだ。

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教授陣の7割以上は空軍士官や将校。士官候補生はstudentではなく、カデット(cadet)と呼ばれ、卒業後は、理学士(Bachelor of Science)の学位が与えられ、空軍少尉となる。今年、コロラドスプリングスの空軍士官学校から卒業したカデットは、総勢812名。例年に比べると少なめの卒業生数だったようだが、そのうち20%が女性で、25%が黒人系、ヒスパニック系、アジア系など白人以外の人種だ。

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大学敷地内にある大きなアメリカンフットボールスタジアムで行われた卒業式には、オバマ大統領が訪れ、卒業生一人ひとりと敬礼を交わし、期待と励ましの熱い言葉を贈って祝福した。スピーチの中には、「米国のリーダーシップがこの複雑な世界には必要で、その指導力を縮小することは出来ない。そして、卒業生諸君がこの国の自由を守ってくれるお陰で、我々は安らかな日々が過ごせる。君たちが強くあり続ける限り、君たちが学んだ誠実さや任務や崇高さの価値観は真実であり続ける」と、アメリカが誇る軍としての重要なリーダーシップのあり方や、新たな時代を担う卒業生への強い期待と励ましの言葉の数々が盛り込まれた。

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空軍士官学校の卒業式の恒例といえば、卒業生が一斉に帽子を空に投げるハットトスとサンダーバーズのフライオーバーのシーンだ。澄みきったコロラドの青空に、白い帽子が舞った瞬間、世界トップの曲技飛行チームとして知られる米空軍のサンダーバーズがその上空を勢いよく飛行する。ゴーッと激しい音とともにマッハ2級戦闘機が繰りだすパワーとアクロバティックな飛行パフォーマンスには、ただ圧倒される。見た事もない迫力とスピードで、まるで鳥が上空に絵を描くように飛行するサンダーバーズ。気高い雰囲気のセレモニーで高揚する会場の空気がクライマックスに達する。そんな期待感と高揚感が溢れる最高の卒業式だった。

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