Colorado:コロラド
2015-12-25
ネイティブアメリカンの大地へ 2

モニュメントバレーのティピで朝食をすませると、ナバホ族でティピの管理人をしているおじさんが「今朝の日の出は最高に良かったね〜」と、笑顔で話しかけてきた。確かに、こんな穏やかで美しい朝日をのんびり眺めたのは、久しぶりだった。おじさんが用意してくれたコーヒーを片手にモニュメントバレーの贅沢な朝の時間を楽しむ。今日は次の目的地、ナバホ·トライバルパーク、アンティロープキャニオン(Antelope Canyon)とホースシューベンド(Horseshoe Bend)に向かう。荷物を車に詰め込むとアリゾナ州へ向かい、ティピを出発。

モニュメントバレーから西へ車で走ること約2時間。アンティロープキャニオンの手前に、レイクパウエル(Lake Powell)があらわれた。ユタ州とアリゾナ州の州境にまたがるレイク パウエルは、全米で2番目に大きい人口湖だ。穏やかで透き通る水面は、エメラルドグリーンをしている。

1.Lake Powell00

このレイク パウエルを中心に半径230kmの地域を人々は、グランドサークル(The Grand Circle)と呼ぶ。グランド サークルには、世界遺産であるグランド キャニオン、ヒーリングの聖地セドナ、ザイオン国立公園のほか、メサヴェルデ国立公園、モニュメントバレーなどが含まれる。そして、もちろんアンティロープキャニオンもホースシューベンドも、このグランドサークルに含まれる国立モニュメントの一つだ。

アンティロープキャニオンは、レイクパウエルから数キロ離れたアリゾナ州ページ(Page)という街のすぐそばにある。モニュメントバレーと同じくネイティブ アメリカン ナバホ族の居留地内にあるので、ナバホ族の人によるガイドなしでは入ることができない。

2.Antelope05

別名スロットキャニオンとも呼ばれるように、狭く奥に細長く続く渓谷だ。キャニオンの中に足を踏み入れると、そこはこれまでに見たことのない幻想的な空間に包まれる。渓谷と言うより、洞窟の中にいるような感じさえする。滑らかでひんやりとした岩肌、優美で流れるような地層は、周囲の砂岩が何百年にもおよぶ時間をかけ、雨と風の侵食によって出来上がった。

3.Antelope04

ナバホ族のガイドの話しによると、特にモンスーンの時期に降る雨水は、地面に染み込むよりも早く地表を流れ、鉄砲水のように谷間を高速で走りぬけて行くのだそうだ。また、長い時間をかけて通路が浸食されると、砂岩の鋭さはより滑らかに削られ、後には流れるような美しい曲線が自然に造り上げられる。こうして自然の長い歳月をかけて出来上がったのが、アンティロープキャニオンだ。そして今もなお、大自然と共に少しずつ変化を繰り返している。

4

水の力により削られ流曲したアンティロープ キャニオンに太陽の光が降り注ぐ瞬間、真っ赤な岩肌が鮮やかなピンクや黄色、時にむらさき色、青色に輝く。見る時間や角度によって変わった表情を出す砂岩の壁、神秘に満ちた美しさに言葉を忘れて、ただ圧倒されてしまう。壮大な自然の力と歳月が造り出した神秘的なキャニオンだ。

5

不思議な時空の余韻に浸りながら渓谷を去り、数分のドライブで、次の目的地ホースシュー ベンドへ到着。ここは国立公園でもナバホ·トライバルパークでもない。レイクパウエルの下流に位置するホースシューベンドは、グランドキャニオンに繋がる、コロラド川の一部が馬の蹄(Horseshoe)のように大きく蛇行していることから、その名が付いた。

6.Horseshoe Bend00

Google Mapで見ても明らかなほど、川は蹄の形に大きく湾曲している。そして川のカーブの外側は、長い歳月をかけてコロラド川によって鋭く浸食され、ほぼ垂直に切り立つ断崖絶壁だ。眼下に流れるコロラド川は雄大で、赤茶色の大地がどこまでも続く。あまりの迫力に足がすくんでしまうほどの広大なパノラマだ。

7.Colorado River01

アンティロープキャニオンもこのホースシューベンドも、壮大な時間をさかのぼり、大自然の奇跡が造り出した神秘のアートだ。そして、ふと、考えさせられるのは、我々は今、遥か昔から続く大地の歴史のその一瞬を見ているに過ぎないのだと。

8.Horseshoe Bend01