Shanghai:上海
2016-02-10
心温まる旧正月の寧波料理

中国で最も重要な年中行事といえば春節、つまり旧正月です。2016年は2月8日が旧暦の1月1日にあたります。街では正月飾りがたくさん売られ、デパートやショッピングモールも真っ赤なデコレーション一色になります。普段は国際都市だと感じることの多い上海ですが、この時期だけは「やっぱり中国にいるんだなあ」という実感が湧いてきます。

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年末になるとあちこちのレストランで日本の忘年会のような「年会」が行われます。私も旧正月の年の瀬にあたる1月末、美食著述家の江礼暘先生を囲んだ食いしん坊仲間たちとの年会に参加しました。場所は寧波(ニンポー)料理のお店『源茂苑酒店』。上海の中心エリアから少し離れた、ローカルな雰囲気のレストランです。メンバーの一人で、寧波出身のここのオーナーが「春節まで少し早いけど、寧波らしい新年の料理を楽しんでほしい」と、みんなを招待してくれたのです。

寧波は上海の南に位置する浙江省の歴史ある港町。料理は海鮮を使ったものがメインです。店内の水槽には寧波から直送された魚介類がいっぱいで、販売もしていました。また、寧波の特産として、うるち米で作った餅も有名です。粘り気がほとんどないため料理に使い、バリエーションが豊富。餅は中国語で「年糕(ニエンガオ)」といい、餅料理はお正月の定番です。同じく春節中に食べる白玉団子などは、江先生によれば昔は上海の家庭でも石うすを挽いて手作りしたものだとか。

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この日は、貝類を黄酒に浸けた「寧波酔三螺」や白身魚の団子入りスープ、餅と龍頭魚(テナガミズテング)の煮込み、粉末海苔をまぶしたお米と甘酒のまんじゅうなど、様々な海鮮や餅を使った料理が並びました。

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なかでも印象的だったのが、渡り蟹のブツ切りと一緒に餅を炒めた「梭子蟹炒年糕」。蟹の旨味が餅にたっぷり絡み、直球のおいしさです。

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さらに、牛の角ごと皿に盛られた豪快な牛肉料理「牛頭菜」も登場。他の地域にもある縁起のいい料理で、おめでたい気分を一気に盛り上げます。

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新年を迎える祝いということで、もち米で作った寧波の醸造酒「白糯米酒」を熱燗にして乾杯しました。少し味の濃い寧波料理によく合います。上海はこの冬、多くの家の水道管が凍るほど寒い日が続いただけに、友人たちと飲み交わす温かいお酒が、心身をゆっくり溶かしていくようでした。

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市街にある寧波料理のレストランは洗練された高級系が増えていますが、『源茂苑酒店』は料理も雰囲気も実に素朴。本格的な地方料理を気軽に楽しめる貴重なお店です。帰りがけにオーナーから「祝你新年愉快(楽しい新年を)!」と、年糕のお土産をたくさんいただきました。今年の旧正月は、自宅でも餅料理に挑戦してみようと思います。

●源茂苑酒店
上海市虹口区水電路638号
tel.021-5696-0937