上海にはM50というギャラリーやアトリエが一堂に会するスポットがあります。週末になると多くの人で賑わう、上海随一のアートエリアです。そのM50にあるギャラリーのうち、私が最近気になっているのが「island6」。昨年たまたま訪れたのですが、独特のインパクトに惹きつけられ、先日も見に行ってきました。
2006年に設立されたアート制作集団「Liu Dao六島」の作品を展示した空間です。同じスペースに彼らのアトリエも併設。映像、LED、絵画、アニメーション、音楽など、マルチメディアを駆使したインタラクティブな新感覚アートです。
たとえば、「Inherently Blue」という作品。竹の足場に囲まれた中国の青花文様の壺がアクリル絵画で描かれ、その足場に乗って壺に塗装する人物のアニメーションが映し出されます。
Inherently Blue/Liu Dao 六島
「The Up Down Blues」は中国の伝統工芸である切り絵細工がベースです。取り壊されていく古い建物を切り絵で表し、背後に高層ビルがLEDアニメーションで現れます。
The Up Down Blues/Liu Dao 六島
また、タイトルに物理学者のフーコーの名前が入った「It’s not your Foucault」は、時間がテーマ。アンティークの壁掛け時計の振り子部分にビデオアートを組み合わせた作品です。
It’s not your Foucault/Liu Dao 六島
このほか、手を叩くと荒地に立つ木にLEDの花が咲く写真や、鏡をのぞくとメッセージが現れるドレッサーなどもありました。おしゃれでユーモラス、そしてちょっと考えさせられる作品の数々に、時を忘れて見入ってしまいます。
Old Homes after it’s all Said and Done/Liu Dao 六島
「Liu Dao六島」の作品はチームで制作し、すべて一点もの。中国ならではのモチーフをモダンかつ哲学的に解釈して表現したものが多くみられます。
ユニークなのは通常15人前後いるというチームの構成。上海をベースにしていることが共通点ですが、出身地はフランス、アメリカ、中国大陸、香港などとバラバラ。画家や写真家のほか、エンジニア、プログラマー、ゲストアーティスト、それから作品に添える文章を書くライター、ダンスのアニメーションのための振付師と、実に様々な人が参加しています。ちなみに、この集団を設立し、アートディレクターを務めているのはフランス人のアーティストです。
アトリエをのぞいてみると、キャンバスや中国磁器などに交じってケーブルやネジ、端末らしきものがたくさん置かれていました。壁際の棚にある引き出しの中身はほとんどが金具! 制作途中の作品の裏側には機械が細かく取り付けられていました。一般的なアートの制作現場の風景とはだいぶイメージが異なります。
「island6」で生まれた作品は、パリやニューヨーク、バルセロナ、ロサンゼルス、ドバイ、香港など、世界各地のエキシビションで展示されたり、ギャラリー等で扱われたりしています。また、上海の人気ショッピングモール「K11」のエレベーターの中にも飾られています。
ハイテクノロジーを表現の手段に、国境を超えたチームで最先端のクリエイションを生み出す。今の上海ならではの、新しい時代の新しいアートだと思います。
●island6
上海市莫干山路50号 6号楼2F
Tel:021-6227-7856
http://www.island6.org