中国には「自然界は木、火、土、金、水の5つの要素で構成されていて、この順番で物事は流れている」という五行説があります。昔から尊重されているこの考え方においては、季節に関しても1年を四季ではなく“五季”としています。では、いったい私たちが知っている四季に何が加わるのでしょう?それは梅雨です。長夏とも呼ばれますが、長い夏の間の湿度の高い時期のことをいうので、ちょうど梅雨にあたります。
日本では春の次に梅雨がきて、と考えますが、陰暦においては、5月の気持ちの良い初夏にあたる時期には夏が既に始まっている、と考えるとわかりやすいかもしれません。梅雨本番には少し早いのですが、今回は梅雨の食養生やむくみのお話をしましょう。
梅雨時の気候の特徴はなんといっても湿度ですね。“脾”を傷めやすいシーズンです。脾は現代医学でいう脾臓ではなく、胃腸などの消化器を指します。この脾というところは、乾いていて、温かい状態を好みます。ですからこの時期調子を崩しやすいのです。中医学では水分代謝は腎だけでなく、脾、肺とで協調して行っていると考えるので、むくみと大きく関わる臓器です。
そんな脾に働きかけるのが、今の時期、美味しい豆類。空豆、いんげんなどは消化器に働きかけるだけでなく、カラダから湿も追い出してくれます。アスパラガスやとうもろこしも同じ働きがあります。旬のものはその時期に必要なものであることが多いのですが、梅雨本番がやってくる前にからだの中のいらない水分を排出し、消化器の働きをアップさせておくとよいですね。そんな食材をつかったお料理をご紹介します。
まずは「空豆、いんげんとフェンネル(ういきょう)のサラダ ミント風味」。前回ご紹介したフェンネルシードの種ではなく、今回は鱗茎(りんけい)を使いました。梅雨時はじっとりした湿度のせいで巡りが悪くなります。そんなときにさわやかな風味が気を巡らせます。ただ、フェンネルは欧米では一般的なのですが、日本ではまだ見かけることは少ないかもしれません。そんなときはレタスで代用してください。気を巡らせるわけではないですが、食感も楽しめますし、消化器に働きかけ、湿を出してくれます。
そして「鶏肉とアスパラガスのソテー コーンソース」。脾に働きかける鶏肉と、さきほども触れたアスパラガス。もちろんそれだけでも梅雨の食養生にはよい食材なのですが、ポイントはソースにあります。韓国の伝統茶、とうもろこしのひげ茶はご存知ですか?利尿作用にすぐれ、むくみをとると言われています。このとうもろこしのひげ、南蛮毛というむくみをとる生薬でもあるのです。生薬は乾燥して硬いので煎じて飲むのですが、フレッシュなひげ、捨てていませんか?先のほうに出ている茶色い部分は食べづらいのですが、内側の柔らかい青い部分はぜひ刻んで使ってみてください。私はとうもろこしご飯を炊くときにも刻んで一緒に炊き込んでいます。青臭みもないですし、ごわごわすることもなく、全く気になりません。またソースにはしょうがも使っています。仕上げに添えたみょうがもそうですが、発散させて汗をかかせる効果があります。カラダの余分な水分の排出は利尿作用を持つものからだけではありません。サラダに使ったミントも同じような作用があります。水分代謝をよくして、むくみ知らずで梅雨を過ごしたいですね。(撮影=安井真喜子)
空豆、いんげんとフェンネルのサラダ ミント風味
材料(2人分)
空豆 (さやからだして) | 60g |
いんげん | 80g |
フェンネル(ういきょう) | 50g |
ミント 葉 | 8枚くらい |
ワインビネガー | 大さじ1 |
ディジョンマスタード | 小さじ1 |
A塩 | ひとつまみ |
Aこしょう | 少々 |
Aエキストラバージンオリーブオイル | 大さじ1 |
作り方
1. 空豆、いんげんは色よく塩茹でしておく。フェンネルはスライスしておく。
2. Aの調味料を合わせ、ドレッシングを作る。
3. 1.の空豆、いんげん、フェンネル、小さくちぎったミントの葉を2.のドレッシングで和え、器に盛る。
鶏肉とアスパラのソテー コーンソース
材料(2人分)
鶏もも肉 | 1枚 |
アスパラガス | 4本 |
<コーンソース> | |
とうもろこし | 1/2本 |
しょうが みじん切り | 小さじ1/2 |
玉ねぎ | 1/8個 |
クミン | ひとつまみ |
チキンスープ | 80ml |
塩 | 1つまみ |
こしょう | 少々 |
しょうゆ | ほんの少量(小さじ1/4弱) |
EVオリーブオイル | 大さじ1/2 |
みょうが | 1/2個 |
粗挽き黒こしょう | 少々 |
作り方
1. 鶏肉を大きめの一口大に切り、塩・こしょう(分量外)をふる。アスパラは長めの乱切りにする(5~6cmくらい)。とうもろこしは実を外し、ひげの柔らかい部分は細かく刻んでおく。玉ねぎはスライスする。
2. ソースを作る。小鍋にEVオリーブオイルとクミン、しょうがを入れて熱し、玉ねぎをしんなりするまで炒める。とうもろこしを加え、チキンスープを加えて具材が柔らかくなるまで煮て塩、こしょう、しょうゆを加え、ミキサーにかける。硬すぎるようなら水少々(分量外)を加えてのばす。
3. フライパンに、EVオリーブオイル(分量外)を熱し、アスパラを焼いて取り出し、次に鶏肉を皮目から入れて両面こんがりと焼く。
4. 器に温めた2.のソースを敷き、3.を盛り、千切りにしたみょうがを添える。クミン(分量外)と粗挽き黒こしょうをふる。