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Career Up
2016-05-20
新しい自分に出会う
#02 美術鑑賞の楽しさを伝えたくてアート·ナビゲーターに

freesiaは「やりたいこと」に向かって邁進している人、独立、起業するなどして目標を実現している人を応援しています。そこで、さまざまなジャンルで活躍する女性をご紹介。同じように「何かをしたい!」と思っている人へのヒントになるといいなと思っています。

今回ご紹介するのは、アート·ナビゲーターの阿川千晶さん。ルノワール、モネ、ボッティチェリ、カラバッジョなど、絵画観賞をより楽しむための講座を開いています。展覧会を見に行く前の予備知識として、あるいは日常の中にもっとアートを取り入れたいなど、目的はさまざまですが、阿川さんの講座に参加したことで、アートがより身近になったという方がたくさんいらっしゃいます。画家の波乱万丈な人生や、そこから生まれた名画についてなど、難しい解説ではなく、友人が得意分野について話してくれるような雰囲気で絵画の魅力を伝える阿川さん。これまでの講座のテーマも、例えば「名画の美女から学ぶ、オトナの恋と結婚観」「成功した女流画家から学ぶ、幸せレベルを引き上げるアート」「親子で楽しむアートデー」など、興味をそそられるものばかり。そのお話を聞けば、きっと絵画を見ることがもっと楽しくなるはずです。

1アート·ナビゲーターとして多くの方に絵画鑑賞の楽しみを伝えている阿川千晶さん。
●今のお仕事の内容は?

美術館での西洋絵画鑑賞のナビゲートは、「学問」のような堅苦しさがあり、美術の世界は敷居が高いと思われがちです。私は、いわゆる学術的な難しい解説ではなく、“生活のなかで楽しむアート”という視点で、講座(アートセッション)を開催しています。実際に美術館でホンモノを見ることの大切さはもとより、美術を通して得る心の在り方も大切に考え、学校では教えてくれない知識を伝えていきたいと思っています。「美術館でもっと楽しめるようになったらいいのに!」「普段からアートに親しみたい!」、そんな受講者の方々の声にお応えして、オトナ世代の私達だからこそ、知識を受け取ってオワリではない、ハイセンスな必需品ともいえる「美的感性を上げる美術鑑賞」の極意を、アートセッションでご案内しています。

2ラグジュアリーなホテルやレストランで、親しい友人と語らうように阿川さんのアートセッションは進められます。
●このお仕事を始めるきっかけ、始めるまでの経緯は?

小さい頃から母の影響で上野の美術館に行ったり、画集を眺めるのが好きでした。知的障害を持つ姉の世話をする一方で、画集の中に「生」の煌めきのようなものを感じて、アートと親しむ時間を大切に育んできました。父も当時は会社員の傍ら工芸や書道に親しんでおり、現在は陶芸家として高齢になった今も自由に作品作りに励んでいます。叔父は美術の先生。私も小さい頃から絵を習い、美術が大好きだったので、その道に進みたいと思っていたのですが、アートの世界は食べて行くのが大変という親の助言もあり、大学は英文科に進みました。卒業後は一般企業に3年ほど勤め、その後結婚、一児の母となります。

美術はずっと好きでしたが、特に仕事にしたい、自分から発信したいと思ったことはありませんでした。でも、夫の赴任でアメリカのニューヨークやフィラデルフィアに住んでいた時に転機が訪れます。美術館のナビゲーションが、一方的な小難しい解説ではなくて、みんなが自由に鑑賞し思ったことを言葉にして、それをシェアして感性を育んでいくというもので、その鑑賞方法に衝撃を受けたのです。このスタイルなら、もっと多くの人に名画の面白さ、楽しさを伝えられる!と、体に電気が走るように感動しました!でも実際にカタチにしてゆくまでには熟成させる時間を必要としました。帰国して、当時は子育に専念したいということもあり、行動に移し始めるのは、子供が中学生になってからです。

3ルノワール≪ムーラン・ド・ラ・ギャレット≫3≪お茶≫メアリーカサット小さい頃から絵画が好きだったこと、そしてアメリカで経験した自由な鑑賞スタイルが、その後の阿川さんの道をつくっていきます。左:ルノワール≪ムーラン・ド・ラ・ギャレット≫、右:メアリーカサット≪お茶≫。

最初は自宅をサロンに、友人の講師達を招いて、お稽古サロンを開催するスタイルでした。そのオリジナルのサロンは、お花、ワイン、チーズ、紅茶、テーブルコーディネート、フォトレッスン、自己啓発などバラエティ豊富で、いつも満席で賑わっていました。自分の企画でレッスンを開催していくうちに、「自分自身のアート講座もやりたいとい」と、フツフツとわき上がる「心の声」に気づいたのです。でも、一番最初は不安な気持もあり、確か二千円くらいで開催したのを覚えています(笑)。

アメリカでは自由にアートを鑑賞するスタイルが根付いていて、日本でも小中学校の教育の中で、そういった手法をとっているところはありますが、大人のための講座は、大学の教授や学芸員の方が一方通行的に講義するだけで終わってしまうようなものが多く、そうではなくて、もっと両方通行の心の通う、会話のスタイルを大切にしたいと思いました。

当初は、まわりの友人や夫から、「資格もキャリアもないのに大丈夫?」と問われることもありました。そこで仕事としてきちんとやっていくために、ビジネススクールに通ったり、大学の通信課程で芸術科目を修学したり、心理学の講座にも通い、学びを深めていきました。また、当時は予想もしなかったことですが、大学で英文学の視点から美術を学び、イギリスやアメリカの作家、ギリシャ神話と名画のつながりについてなどの知識があったことが役に立っています。それから大学がカトリック系だったので、聖書の勉強をしたことも利点となりました。西洋絵画の原点は聖書にあるので、それをきちんと学んでいたことが身になっていたのです。一方でコンサルティングの方の指導でメルマガを始めるなど、一歩一歩着実に、進めていきました。

そのうち、自宅開催ばかりなく、もっと仕事としての幅を広げたいと思い、2年前からはラグジュアリーホテルのラウンジや、ステイタスのあるレストランで開催するようになりました。今までのやり方を変えるには覚悟が必要でしたが、開催していくうちに遠方からもお越しくださる受講者の方がいたり、また出張先でも満席となったりして、今の「アート·セッション」のスタイルが根付いてきています。

4ルノワールアートセッション4ルノワールアートセッション2ルノワール展開催に合わせて行われたアートセッション

セッションは、旬の展示会をテーマに、画家の生涯や時代背景、美術史などともに「アート映画」を見るようにパソコンを使いながら解説します。私が一方的に話すのではなく、受講者への質問もおりまぜながらの進行です。またどんな「コツ」を抑えて見たらよいか、疲れない美術館巡りのポイントなどもあわせてご案内し、セッション後、一緒に展示会を見に行くというスタイルです。

5カラヴァッジョアートセッション2+カラヴァッジョ展開催時。アートセッション後に受講者の皆さんと一緒に展覧会へ。

セッションの参加人数は、3~4名の少人数制です。お茶会やランチ会だともう少し多めの5人位。コラボイベントなどは人数が増えることもありますが、基本は小人数スタイルです。参加されるのは、会社員や起業家の方、主婦の方など30代前後~50代の女性の方々です。年齢やご職業はバラバラでも、嬉しいことに受講者の方々の共通点は、何度も足を運んでくださるリピーターとなってくださる点です。

●今一番つらいこと、楽しいことは?

つらかったのは、アートセッションスタイルを始めた頃、PRも何もしてなかったので、受講者の方がいらっしゃらなかった時ですねぇ(笑)。でも今は少しずつ広まってきて、募集文を書く段階からワクワクしています。

楽しいことは、皆さんが私の話を聞きながら目を輝かせて、「千晶さんのおかげで絵を見る楽しみが増えました!」と感謝の言葉をいただくことや、お手紙やメッセージをいただくことです。私のセッションがきっかけで、「千晶さんのアートセッションに出会っていなかったらあの絵を見逃していました!」「運命の1枚に出会えました!」とすぐにメールをいただいた時は、私も感極まりました。

6左:ボッティチェリ展開会で受講者の方と。右:リッツカールトンのラウンジで行ったマグリットのアートセッション。
●これからの目標は?

海外の美術館でもアートセッションを開催するのが私の1つの目標です。美術鑑賞が心潤う生活の一部となるような、幸せのツールの1つとなる活動を続けてゆきたいです。将来的に女性誌などへの連載や、本の出版もしたいと思います。また「自分の好きなこと」を伝えることが仕事になることを、これから起業したい女性達にもお伝えしたいです。

私はいつも心からワクワクするような仕事をしたいと思っていました。「クリエイティブなことだけではお金にならない、非効率だ」と言われることも多々ありましたが、今はやはり自分の好きなことに情熱をかけるのが一番大事だと思います。

●freesia読者へのメッセージ

夢をカタチにすることにむかって失敗を恐れず、ぜひチャレンジする気持ちを大切にしていってほしいと思います。初めて出会う絵の感動はもとより、一度見たことがある名画でも、再度観賞することに意味があります。もし以前見た時と違って見える部分があるのなら、それは自分自身が成長している証です。

アートは世界共通のビジュアル言語。自分から興味をもってのぞきこめば、鑑賞の楽しみはもちろん、人生に役立つヒントさえもそっと諭してくれる、幸せレベルを上げるツールでもあるのです。そんな心潤う贅沢な時間が、読者の皆さまの中で豊かに育まれますように。

プロフィール
阿川千晶 Chiaki Agawa

アート·ナビゲイター。東京出身。白百合女子大学文学部英文科卒。長女出産後、米国東海岸に滞在しNYやボストン、フィラデルフィア等の美術館に足繁く通う。2010年12月から自由が丘のサロンでオリジナルな1dayレッスン「通称AKO STUDIO LESSON」を58回企画主宰し、述べ291名を集客。少人数制ながらも毎回満席のレッスンが人気を呼ぶ。同時に、大学の通信課程にて芸術科目を修学。年間を通じて、国内の展覧会40展以上を観賞。欧米諸国においては、過去100か所以上の美術館、また芸術家の縁の地なども訪問。アートナビゲーターとしての活動を2012年よりスタート。アートセッションの他に、メルマガ「アートのある美的生活のススメ」を発行。フェイスブックのコミュニティ「アート心きらめく美のとびら」では、旬のオススメ展覧会やアートシーンなどの情報を配信。フェイスブックとブログで平日毎日更新中の「今日の1枚」は、忙しい1日の中でさらりと読みたいアートエッセイ。巨匠の名画から隠れ名画まで、阿川千晶流のユニークな視点で西洋絵画の美のエッセンスを解説。
http://akoartplus.com/index.html