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2016-06-24
新しい自分に出会う
#03 住空間収納プランナーが導いてくれる、断捨離のその先

freesiaは「やりたいこと」に向かって邁進している人、独立したり起業するなどして目標を実現している人を応援しています。そこで、さまざまなジャンルで活躍する女性のケーススタディをご紹介。同じように「何かをしたい!」と思っている人へのヒントになるといいなと思っています。

今回ご紹介するのは、住空間収納プランナー&インテリアコーディネーターの鈴木君枝さん。断捨離がブームとなって久しいですが、収納に困っている人にとっては神のような存在かもしれません。鈴木さんは、根本的な家の間取りから家事動線を見直し、適確な収納場所や方法についてのアドバイスを与えてくれるのです。また、収納家具の制作実績も多数。女性の暮らしに寄り添った細やかな視点で、機能的で心地よい住空間を多くの人に提供することを、お仕事としています。

01鈴木さんのコーディネイトによって完成した壁面収納家具。利用する人の希望を細かくヒヤリングし、機能的で美しい収納を作り上げていきます。
●今のお仕事の内容は?

「収納」の視点から快適な住まいづくりのサポートをしています。実際にお客様のお宅にうかがい、持ちモノの量を把握した上で生活スタイルや暮らし方をヒアリングし、より過ごしやすい家にするための改善策を導きだします。また、マンションあるいは戸建ての新築やリノベーションの際は、片付けやすい間取りの提案、オーダー収納家具のプランニング、アクセントウォールなど壁面デザインのコーディネートのインテリアコンサルティングも行っています。

02壁面を上手に活用すると、収納量が変わります。美しい収納はストレス解消にもつながります。
●このお仕事を始めるまでの経緯は?

私は三姉妹の末っ子です。姉二人は短大を卒業して事務職について25歳くらいで結婚していたので、自分も同じように生きていくと思っていました。私も短大の家政科を出て、ブラインドの会社に勤めたのですが、入社したころはがっちり働く気などまったくありませんでした(笑)。でも、仕事をしていく中で、次第にインテリアに対する興味が膨らんでいったのです。それで最初は事務職でしたが、働きながら1年かけてインテリアコーディネーターの資格をとり、ショールームに移動させてもらいました。

けれどメーカーのショールームは、接客から購買につながったという成果が感じられず、だんだん物足りなくなってしまい、憧れていたアンティークショップに転職しました。高校生の時に雑誌「Olive」や「anan」といった雑貨やインテリアの記事をよく読んでいて、そういうところで働きたいという夢もちょっと持っていたのですね。店頭販売から始まり、1年くらいで一番大きな店舗の店長を任されて大変でしたけど、そこでは家具のサイズ感や歴史など、それまでわからなかったことを多く学べたと思います。

その後はアパレル関係の会社で働いた時期もありますが、でもやっぱりインテリアの仕事がやりたくて、「ワイス·ワイス」に就職しました。そこでインテリアコーディネーターとしての仕事に本格的に携わるようになりました。住む世界がまったく違うような方たちのお宅や別荘を拝見することができたり、“箱もの家具”と言われる壁面収納やキッチンのコーディネートを任せていただくこともあって、それが今につながっています。

03メーカーやアンティークショップ、インテリアショップなどでのさまざまな経験が、今の鈴木さんのお仕事に活かされています。

その後、リーマンショックなどの影響もあり、職場の景況や方向性も変化してきていましたので、他にも何かできるようになっておかないとと思い、仕事をしながら以前から興味のあった心理カウンセリングの講座を受けたりしていました。アニマルセラピーやメンタルトレーニングなど、人の気持ちをサポートすることに興味がありました。でも、自分が本当にやりたいこととは方向性が何か違うような感じがしていて、そんな時に住空間収納プランナーというお仕事をされている方と知り合い、「収納セラピー」というものを知ったのです。それが自分の中でものすごくフィットして、インテリアと心理学が、とてもナチュラルにつながりました。そこで、仕事をしながら1年半ほどセミナーに通って、「住空間収納プランナー」という資格を取得しました。

もちろんすぐにその仕事ができるわけではありませんでしたが、もう年齢も40歳に近かったので、これまでと同じような働き方をすることに疑問もあり、それで起業塾に通い始めました。最初は本当に私にできるのかしら?という感じだったのですが、起業塾に来ている方たちが、ものすごく情熱のある方たちばかりで、それで自分もだんだんやってみようかなという気持ちになっていったんです。

その前後に、先に住空間収納プランナーとして働いている方について2年くらい修業もしました。その間、デパ地下でお菓子売りのアルバイトをしたり、やりたいことを実現させるために、その時期は本当にいろんなことをやりました。それで2012年4月に独立して、suzukuriというホームページを立ち上げるに至りました。

ちょうど断捨離ブームが高まっていた時だったこともあって、始めたころは一緒に片付けと収納サポートをするというお仕事から始め、現場での経験を積みました。進めていく中で徐々に、これまでの経験を活かせるインテリアコンサルタントの仕事も増えていきました。

●お仕事をする上で心掛けていることは?

家が片付かないと悩む方はストレスを抱えていることが多いのですが、原因は本人だけにあるものではありません。「だいたいこのぐらい」と用意された収納や間取りに自分や家族をあてはめられずに、居住空間にモノが溢れてきてしまう方も多いのです。

暮らし方は100人いれば100通りありますので、ひとりひとりに合った無理のない収納方法や間取りの提案ができるように、少しでもその方のストレスがなくなるように向き合っています。お仕事で疲れて帰宅して、ホッと安らげる空間はそれだけでも癒されます。一種のセラピーでもあるのですね。

お部屋が片付くと、カーテンを変えたいとか、ソファ-入れたいとか、新たな要望が出て来るので、仕事の幅も広がっていきます。お付き合いの長い方から、子供が学校に入るから子供部屋を作りたいという相談を受けることもあります。商品を売っておしまい、ではなく、ライフスタイルの変化に伴ってお客様と長く寄り添っていけるのが、この仕事の魅力でもあります。今は現場の片付けだけでなく、お客様と一緒に収納家具をデザインしたり、収納をテーマにインテリア空間全体のアドバイスをする仕事が中心になってきています。

04収納だけでなく、壁紙やカーテン、ソファやベッドなど、インテリア全般についても親身にアドバイスしています。
●今一番つらいこと、楽しいことは?

つらいことはあまりないですが、家という一生の買物をされるお客様にとって、もっとも後悔なく、ベストな状況で快適な家づくりのために一丸となれない場面では憤りを感じることがあります。

嬉しいのは、「suzukuriさんにお願いしてよかった」と言っていただけること。オーダー収納を完成させていく段階は緊張しますが、必要な場所に収納したいものがジャストサイズにぴったりと納まったときはとても気持ちがいいです。すべてを自分で判断し、まわしていく大変さはありますが、自分のリズムやスタイルで活動できる満足感や、お客様との出会いがあることを楽しみながら進めています。

05鈴木さんは日本収納プランナー協会やハウスメーカーなどでセミナーの講師も務めています。
●これからの目標は?

丁寧におひとりおひとりの心地よい住まいづくりのサポートをしていきたいです。表面的な美しさだけでなく、動線を含めた機能性も考慮し、家に帰宅した時に、心からホッと寛げる空間を提案したい。また、壁面にこだわったデザイン性の高い空間づくりの提案、アクセントウォールやペイント、タイルなどとの組合せなど、さまざまな選択を楽しみながら居心地のよい部屋を増やしていきたいです。

最終的な目的は、収納のコンサルティングだけでなく、住宅を作る時に、間取りの計画部分からかかわっていけたらと思っています。住空間収納プランナーとして、お客様の持ち物やライフスタイルを把握した上で、家を建てる時からその設計にかかわっていきたいんです。

家を建てる時は考慮する視点がたくさんあるので、建てる側も生活者目線の細部まで目配りできないところがあります。実際、収納スペースをどのように仕切るとか、奥行をどうするとか、実際に紙の図面だけではわからないことを、きちんと立体で説明してあげると、「そうなの?じゃあもっとこうしたいわ」と、言われることも多いんです。その収納に洋服を入れるのか本を入れるのかで寸法も全く違う。アイロン台を入れたいなら、そのスペースも確保しないといけない。実際に使うのは女性の方が多いわけですし、バスルームやキッチンなどは特に、家事をする女性同士でしかわかりあえないことも多い。そういった細かい部分に目配りをしながら、建築家やハウスメーカーの方々と設計段階から一緒にお仕事ができるようになるといいなと思っています。

06建築の段階から収納プランナーがかかわっていく。そうすることで住まい手の生活がより快適になるはずと鈴木さんは語ります。
●freesia読者へのメッセージ

経験はすべて宝物。何ひとつムダなく今の自分につながっていることを感じます。自分の可能性を狭めることなく、興味を持ったことに対して意識を向けるだけでもその先が大きく変わってきます。そのためには日々動くこと。「運は動から生ず」をモットーに、頭で考えるよりも、とりあえず動いてみるといいのではないでしょうか。

何を選択しても、必ずプレッシャーや不安はあります。ならば、やりたいことをやるのが1番です。また、私は起業がきっかけで、39歳で出会った人と42歳で結婚しました。この仕事は女性ばかりだし、もう一生独身と思っていましたが、まさかの展開。仕事の充実が、幸せを呼び寄せてくれたのかもしれません。

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鈴木君枝 Kimie Suzuki

住空間収納プランナー、インテリアコーディネーター。1971年神奈川県生まれ。1992年文教女子短期大学部家政学科卒業後、タチカワブラインド工業株式会社に就職。窓周り全般のノウハウを得る。事務職からメーカーショールームへ異動希望のため、インテリアコーディネーターの資格を取得。その後、株式会社ロイズにてヨーロッパアンティーク家具の販売・店長職に就く。ヨーロッパの文化をもっと知りたくなり、バイヤー業務が伴い直輸入販売ができるアパレルに関わる。その後、株式会社ワイス・ワイスにて店長、インテリアコーディネート業務、キッチン販売、東京ミッドタウン店オープン、など、さまざまな経験を積み、集大成として2012年に住空間収納プランナーとして起業。suzukuri(すずくり)を立ち上げる。現在は日本収納プランナー協会やハウスメーカーにてセミナー講師も務める。
●suzukuri
http://www.suzukuri-k.com/