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Career Up
2016-07-19
新しい自分に出会う
#04 一枚のパステル画がもたらす幸福を多くの人に伝えたい

freesiaは「やりたいこと」に向かって邁進している人、独立したり起業するなどして目標を実現している人を応援しています。そこで、さまざまなジャンルで活躍する女性のケーススタディをご紹介。同じように「何かをしたい!」と思っている人へのヒントになるといいなと思っています。

今回ご紹介するのは、見ているだけで心が穏やかになるパステル絵画の講師、杉本みのりさん。曼荼羅花アートを簡単に美しく仕上げるための点対称模様定規(曼荼羅シート)の特許も取得している杉本さんは、絵を描くことで多くの人が感性を磨き、新たな自分を発見できることを願っていると語ります。水も油も使わないパステル画は、誰もが簡単に始められるアート。忙しい毎日の合間に、その表情豊かな世界に触れてみてはいかがでしょうか?

1パステル画の魅力は誰でも簡単にできるのに、とても繊細な風合いを表現できる点です。
●今のお仕事の内容は?

パステルの中でもあまり知られていない、ハードパステル(以下パステルとも呼びます)という画材を使って描く絵を、オリジナルメソッドで教えています。教室は3~4人の少人数制。プライベートレッスンを行なうこともあります。対象は初心者からプロのインストラクター向けまで幅広く、「フラワーパステル画」「白の世界」「曼荼羅花アート」など、いくつかの講座があります。

2手作りのポストカードを作ったり、絵画作品をそのまま誰かにプレゼントしたり。日常のさまざまな場面でそのスキルを活かすことができます。
●このお仕事を始めるまでの経緯は?

私は物づくりが好きな両親の元で育ちました。母は工芸作家で、建築関係の仕事をしていた父も、退職後の今は、若い時から好きだった絵画を楽しんでいます。そんな両親の影響からか、私も図工や美術が一番好きな教科で、美術専科の高校を経て美大へ進みました。ところが美大に入ってみると、周りは絵が上手な人だらけ。「絵が好き」程度では、とても追いつけないと思い、私にとって絵は、次第に強いコンプレックスに変わっていき、いつしか描くことはやめてしまいました。それで美大では工芸工業デザインを専攻し、卒業後は父の元で設計の仕事に就きました。

結婚後は出産、子育てと、一時的に物づくりからは離れましたが、子ども達が幼稚園に入ると、何かをしたいという気持ちになって、粘土作品を作ってインターネットで販売してみました。するとニッチなファンができて、結婚式の引き出物や贈り物にと沢山の注文をいただくようになり、やがて「自分でも作ってみたい」と言われて教えるようにもなりました。その後、子どもが中学生の頃、家族のことで心身ともにとても辛い体験をしました。今、思い出しても、自分の無力さにあれほど打ちのめされたことは他にない、人生で一番辛い時期でした。その時に、なぜか「絵を描きたい」衝動に駆られたのです。

3杉本さんご自身も、絵を描くことによって救われた経験があります。1色から始まる「白の世界講座」では、メルヘンな絵本のような作品がすぐに描けるようになります。

あんなに苦手で遠ざけていた絵なのに、なぜ描きたいと思ったのか、今でも本当に不思議です。その時に手に取ったのがパステルでした。理由はシンプルで、水も油も使わず簡単にささっと描けるからでした。その頃は主人が単身赴任中で、家庭に関わるすべてのことに私一人で対応しなければならず、ゆっくりと絵を描く時間を取ることはできませんでした。それで少しの時間でも描けるハードパステルが、当時の私にとっては時間の融通が利き、便利だったんです。母が工芸作家だったので、あらゆる画材がうちに揃っていたというのもラッキーでした。

慌ただしい日々の中で、描いている時はまるで瞑想するかのように気持ちを落ち着かせることができました。パステルを使い、どう解消すればいいかわからない気持ちを、指を通して画用紙に託していたのです。そして描いた作品を、日々の子どもへの想いを添えてブログにアップしているうちに、「この絵の描き方を教えて欲しい」というお声をいただくようになったのです。それで3年前から、パステル講座を開くようになりました。

その過程で、点対称模様定規(曼荼羅シート)の特許を取得しました。これは上下左右対称の美しい模様を描く際、まず最初に中心点から正確に等分線を計算し分度器を使って基本の線を引くという準備が必要で、この作業時間をなんとか短縮できないかと考えていました。幸い設計の仕事をしていた経験があるので、自分で図面を引いて、自分のためにつくったのです。そうしたら、使った方がみんなすごく便利だって驚いて、いろんな方から特許を取れとすすめられて取得したものです。

最初の頃は、協会にも属さず何の後ろ盾もないので、パステル講座を仕事として軌道に乗せる方法も、せっかく持っている曼荼羅シートの特許の活かし方もわからず、誰にも知られていないので、生徒さんがまったく来なかった時期もありました。でもコンサルタントの方にビジネスの基礎的なことを学び、今ではブログやフェイスブック、メルマガ配信などで情報発信し、新しい出会いをどんどん広げています。

4杉本さんが特許を持つ曼荼羅シートを使えば、経験を問わず簡単に美しい曼荼羅花アートを描くことができます。
●このお仕事において常に心掛けていることは?

私のレッスンにいらして下さる方は、スキルが本当に千差万別なんです。全くの初心者の方から、絵に関して傷ついた経験をお持ちの方。反対に、描くことが大好きな方や、今すでにお教室を開いているパステルのインストラクターさんまでいらっしゃいます。そのすべての方のスキルと目標に合わせて、個々の課題と解決法を的確に見つけることで、以前よりも作品をステップアップさせ、その達成感や感動を重ねていただくことに心を砕いています。それが次への好奇心ややる気を生みだしてくれるからです。私のところへ来たら、「どんな質問にも的確に答えてくれる」「今の自分の最高を引き出してくれる」「自信を持って描けるようになれる」と言っていただけるよう、そのための努力は惜しみません。

5日本画、工芸デザイン、彫塑、設計など、さまざまなスキルを持つ杉本さん。受講者それぞれのレベルに合わせ、独自のメソッドでレッスンを行なっています。

パステルの初歩的技術は1日で学べます。それでも描くことが好きになったと、何度も通ってくださる生徒さんもいらっしゃいます。離れて暮らすお子さんにパステルのポストカードを送ったり、ご両親に絵を送ったり、メールとかではなく、自分の手で作ったもので温かさを届けることが、自分にも簡単にできるということに気づかれて、さらに描くことが好きになる方もいます。生徒さんだけでなく、その周りのご家族や友人の方々の笑顔も大切に考えています。

5.5自分の作品でお部屋のインテリアを華やかにすれば喜びもひとしお。大切な人への贈り物にもできます。
●今、いちばん楽しいことは?

生徒さんたちの喜びの報告をお聞きした時です。御主人が絵を楽しみにして下さる、お子様から上達ぶりを褒められる、大切な方へ贈ったらとても喜ばれたなど、幸せを誰かと共有されている様子や、個展やグループ展の報告、また「新しい生きがいになった」と言われた時は感無量でした。絵を飾っていたら家庭の雰囲気が変わったとか、絵を描いていたら家族との関係がよくなったなど、そんな嬉しい報告をお聞きするたびに、私のほうが感激しています。

あとは「ここで習って本当によかった!」と言っていただける瞬間ですね。どの講座も、教えているのは工夫を凝らして構築してきた愛おしい作品ばかりです。それらのシリーズを愛してくださり、中には新幹線や飛行機で来てくださる方もいて、それもこの上ない喜びです。

●これからの目標は?

もっともっとみなさんの暮らしに気軽にアートを取り入れて頂けるようになることでしょうか。私は絵は「もうひとつの言葉」だと思っています。日常が美しい言葉で彩られた暮らしが当たり前のコトになってほしいですね。心をこめて食事をつくるように、お部屋に綺麗なお花を活けるように、季節や気持ちの変化ごとに、絵の持つパワーを上手に使っていただけたら嬉しいです。

実際、絵を描くようになってから、モノの見方が変わったと言われる方も多いんです。例えばチューリップを描きましょう、桜を描きましょうと言っても、最初はほとんどの方が、定番の描き方しかできませんし、結構ディテールが間違っている。そうすると、もう一回ちゃんと見てみようというスイッチが入るんですね。私たちは毎日多くのものを見ていますが、実際はほとんどのものをちゃんと見ていません。見ていたようで見ていなかったことに気付くと、何を見ても初めて見るもののように見えるんです。それが楽しいと言われる人もいます。絵を描くようになると、自然と観察が深くなります。それは、自分や大切な方たちとの幸せな暮らしを意識的に創っていくベースにも繋がります。アートを通して、自分で幸せをデザインしていくことが可能なことを、もっと多くの女性に伝えられたらと思っています。

6空の雲をどう描くか?そうやって雲をじっくり見て観察するだけでも、今まで見えてなかったことが見えて、世界が違って見えると杉本さんは語ります。
●freesia読者へのメッセージ

子供の頃に好きだったこと、時間も忘れて夢中になっていたことをぜひ再開し、そしてそれを長く続けてみて下さい。「もう一つの言葉(絵)」は、心の声です。すべての方がそれぞれの経験の中から、その人にしか表わすことができない個性をお持ちです。そんな正直な感性を、大好きな方達と共有していただきたいのです。そこにはきっと、不思議で面白い化学反応が生まれますから。

絵は自分のもう一つの言葉。心に響く作品は、やさしく暮らしを照らし、空間を彩り、大切な人たちにエールを送ることができます。また、面白いことに絵は、描けば描くほど変化していきます。変化に気づくたびに、自分やご家族の幸せの形が進化していることに気づきます。パワースポットをお家の中に、ご自分の手で創りだしていくこともまた、大きな喜びとなります。

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杉本みのり Minori Sugimoto

ハードパステル講師。1967年岐阜県生まれ。武蔵野美術大学卒。店舗設計、工芸作家助手などを経て、自ら工芸作家としてWebにて粘土作品販売開始。2002年から講座を開始する。その後、ヒーラーとしてもキャリアを積み、延べ2000件を超えるセッションと、パステルも含め大小合わせて150以上の講座を開催。2013年からはヒーラーの看板を下ろし、描くことの楽しみを伝えるパステル画講座のみを開催。自ら特許を持つ曼荼羅シートを使った「曼荼羅花アート」やシンプルメソッドによる「白の世界」などの講座を展開し、ハードパステルの魅力を伝えている。
●大人パステルで心のスケッチ
http://www.rainbowflow.jp/index.html
●大人のパステル表現講座
http://profile.ameba.jp/mihanae-minori/