Beijing:北京
2015-10-21
客家の郷で知った長寿の秘訣

ここ一年ほど表紙の撮影をさせていただいている中国外文局の雑誌『人民中国』の仕事で、客家(ハッカ)の人々が住む広東省梅州市焦嶺県を訪れました。昨年、国際自然医学会から「世界的長寿郷」の称号がこの地域に与えられ、その長寿の秘訣を取材しました。

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掲陽空港から高速道路を車で約2時間、外の景色は田園風景から山岳風景へと変わっていきます。水牛を引いた農民とすれ違ったり、ゆったりとしたのどかな時間は村の入り口から始まっていました。

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空気は驚くほどきれいで、大気汚染の激しい北京から来た私は、思いっきり深呼吸できることの嬉しさを改めて感じました。人々はとてもやさしく友好的で、訪ねた民家では一族が集まり、自家栽培の野菜を中心とした素朴な客家料理で私たちをもてなしてくれました。

蕉岭県は人口23万人のうち、100歳を越える老人が45人、90歳以上が1791人いる、中国でも有数の長寿の里。その秘訣を、長寿と健康に詳しい焦嶺県政協主席に伺いました。主席によると、長寿の要因は科学的にもいくつか研究されているそうなのですが、中でも〈生活環境〉〈食事〉〈心の持ちよう〉の3つが大きな要素だと話してくれました。確かに、ここの空気と水はとてもきれいで、そんな環境で育まれた自家製の野菜や鳥や豚は、農薬の心配もなくとても美味しかったです。

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けれども、空気や水がきれいで食べ物が美味しい場所は他にもありますが、そこが必ずしも長寿の地域というわけではありません。すると、最後の〈心の持ちよう〉ということに、大きな鍵があるのかもしれないと思い、この地の客家の人々のことを調べてみました。

客家とは、もともとは黄河流域で暮らしていた漢民族のうち、戦乱や災害から逃れるため、黄河を越え、更には長江も渡って数千キロを徒歩で南下して来た難民なのだそうです。 その路程で多大な苦労をし、また、やっとたどり着いた新しい場所でも、地元の人との摩擦も多かったそうです。 彼らに対して、地元の人が「外からの客人」と蔑称の意味を含め呼んだことが「客家」という言葉の起源とされています。客家の人々はそんな環境と歴史の中で、移り住んだ地域の人と文化に必死に調和・融合しながら暮らしてきたそうなのです。

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周囲との争いを避けるため、人に優しく、心穏やかに暮らし、家族の和睦を大切に、そしてお年寄りをいたわる。「和を持って貴しとなす」という精神こそが、客家の人々が長い歴史と苦労の中で培い、子孫が受け継いできた彼らの処世術なのだと知りました。そして、そんな暮らし方こそが、この地の健康と長寿の秘訣のようです。この日も70歳の江さんが近隣に住む93歳になる呉さんを訪れ、互いの健康を喜び合っていました。

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誰かと喧嘩をしたり、人にいじわるなどすることなく楽しく暮らしてゆけば、私の寿命もきっと今より数年は伸びるだろうとしみじみ感じた旅でした。