Milano:ミラノ
2016-02-01
ミラノのヴィンテージシネマは今

パンダ顔にスキー焼けした子どもたちがチラホラ・・・北国ミラノを振り返えらせるこのシーズン。北海道は稚内と同緯度のミラノで、この時期の週末の定番と言えばスキー、もしくは寒がりスポーツ嫌いのシティ派達にとってはシネマ(映画館)やムゼオ(美術館)観賞といったもの。とはいえ、後者のシネマにおいては、ミラノも大きな転換期を迎えていることを痛感する。

新宿の「ミラノ座」の閉館ではないが、ミラノの街と映像世界の移り変わりを見続けてきたヴィンテージシネマが続々と閉館しているのだ。映画好き、レトロな映画館の内装とムードが大好きな私としてはかなり寂しいことでも。

建築家ヴィコ・マジストレッティの父、ピエール・ジュリオが1928年に手がけたドゥオモ大聖堂のお膝元の映画館「L’Excelsior」(エクセルシオール)が、仏建築家ジャン・ヌーベルによってモダンなラグジュアリーコンセプトストアに姿を変えたことはショッキングなニュースだった。さらにお近く「Apollo」(アポロ)はアップルストアとなり、59年創業の「ODEON」(オデオン)までも、来年にはお隣の百貨店「リ・ナシェンテ」の店舗の一部となる計画だ。

ただ、姿を消しゆく歴史的映画館の中には、ヴィンテージシネマの歴史と空気感を愛する新オーナーとの巡り会いで、当時の古きよき軌跡を残しながら新たな役を担って蘇り、再びミラネーゼの日常に寄り添う存在となったものもあり、興味深くもある。

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例えば、1912年誕生の「Cinema – Teatro Trieste」(シネマ・テアトロ トリエステ)は、映画館の名をそのまま施したライブミュージックレストランとして蘇った。月曜を覗き、毎夜、映画上映にジャズやスウィングのライブコンサート、キャバレーといったエンターテイメントがプログラムされ、食事と一緒に無料で楽しめる場所となった。

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創業当時のリヴァティスタイルのファサードはもちろん、巨大スクリーンや音響のためにデザインされた波打つ天井、当時の看板や木製の座席といったオリジナルの内装意匠が残され、どこか懐かしい空気。

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長く飲食業、食材、食育といった食に関わるコンサルティング事業を経営してきたオーナーが、ビジネスの傍らで自らのパッションを注いだこの場所が大ヒット。中心街から離れた旧ミラノ見本市会場エリアにも関わらず、日常的に楽しめる質の高い健康的な食材だけを用いたシンプルクックの美味しさと、充実したライブを求め常にローカル達でいつもいっぱいだ。

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もう1つの注目スポットは「Cinema President」(シネマ・プレジデント)だ。こちらは、通称イタリアモダンデザイン通り、ドゥリーニ通りと金融エリアに挟まれたプレスティージな場所に佇む77年創業のシネマ。昨年末、上質なレザー家具ブランド「BAXTER」(バクスター)が、映画館の建築構造を活かした新コンセプトのフラッグショップとして蘇らせた。

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ファサードには「BAXER CINEMA」という名。上映看板までもが掲げられ、タイトルには「Architects Party」「Pop your creativity」といったユニークな記述。かつての映画館の意匠はBAXTERのクリエイティビティと洗練によって今に刺激的に蘇り、インテリアデザインとシネマの世界をクロスオーバーさせたユニークなプレゼンはドラマティック。

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地下の元映画室であった広大な空間には、家具とともに巨大スクリーンが覗く。BAXTERのコレクションやクラフツマンシップを映像で見せるアプローチに加え、かつての映写室を利用した個室スタイルのリアルな展示も繰り広げている。ウェルカムブースを彷彿させる1階のアレンジやソーシャルバー、ミニブックショップの設置もわくわくさせるアレンジ。ショールームを超え、多様なコミュニケ—ション、イベントの場を期待させる空間だ。

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さよなら、古き良き映画館たち・・・寂しさと同時に、そんな映画館に代わる新たな時代のソーシャル&カルチャースポットに期待!

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●Cinema -Teatro Trieste
Via Antonio Pacinotti 6, 20155 Milan
http://www.cinemateatrotrieste.it

●Baxter
Largo Augusto 1, 20121 Milan
http://www.baxter.it