12月末まで禁止されている公式「セール」が、唯一解禁される11月25日（金）開催のブラック・フライデー。この日を境に、ミラノの街は一気に魅惑的なクリスマスムードに包まれます。そして、ミラノの守護神、聖アンブロージョの祝日（12月７日）も、ちょうど過ぎたところです。
華やかに彩られた街に目を輝かせるのも、ギフトショッピングに夢中になるのも、この時期のミラノの醍醐味。しかし、それだけではありません。この時期こそ、ミラネーゼが街に点在する多くのミュージアム巡りに心弾ませる時。週末に郊外の別荘へとミラノ脱出を繰り広げるミラネーゼも、水辺に出かけるには寒く、山でのスキーには雪が乏しい中途半端なこの時期の遠出を避けてミラノに留まり、新企画に富む市内ミュージアムでほっこりと知的に過ごすという感じでしょうか。
12月４日は「Domenica al Museo（ミュージアムでの日曜日）」でしたが、市が毎月第一日曜に設定するこの「ミュージアム無料公開日」も手伝い、市民のミュージアムへの足並み、関心は一気に高まります。
さらに今、ミラノではどのミュージアムも館内の飲食店の充実に力を注いるので、楽しみ方の幅も広がります。私と言えば、子どもたちを美術館のラボに参加させている間、ママ友と展示鑑賞や館内のカフェでアペリティーボを楽しんだり、Wifi完備の快適なカフェへで仕事をしたり、一息入れたりと愛用。今回は、よく利用する４スポットをご紹介します。
ひとつ目は、エキスポ開催直前にオープンしたMUDEC（文化博物館）。ミラノ西部の元産業地区が、モードやデザイン企業の転居ラッシュでクリエイティブに蘇ったトルトーナ地区にあります。
建築家、デビッド・チッパーフィールドによる光を操る巨大建物も、充実した企画展やラボも大人気ですが、特筆したいのは、館内のレストランとビストロ＆カフェに、ミシュラン星付き若手シェフ、エンリコ・バルトリーニを迎え、食シーンにもこだわっているところ。
チケットにも『展示鑑賞＋アペリティーボ もしくは夕食』という、「アート」と「食」を同時に味わえる特別料金を用意。前者が22ユーロ、後者が45ユーロ、とお得だと思いませんか？
ミラノらしさで言えば、イタリアのトップファッションブランドが運営するミュージアムを外すことはできません。ひとつは、常におしゃれな人々で賑わうプラダ財団運営の「Fondazione Prada」。レム・コールハース率いるOMAによって個性的に蘇った蒸留工場跡は、まさに建築自体が現代アート。
映画監督ウェス・アンダーソンが内装を手がけたレトロモダンな「BAR LUCE」では、ママもキッズもハッピーになれる可愛らしいスイーツとジェラートがオススメです。そして、ママへの朗報！なんとプラダが開催する子どもたちのアートラボは、参加費無料！
そして、もうひとつ、MUDECご近所の「Armani Silos」。昨年80歳となりブランド設立40周年を迎えたジョルジオ・アルマーニ氏が、その集大成として誕生させたアーカイブ美術館です。神殿のような神秘性と静謐さを備えた４層の建物は、疑いもなく建築家・安藤忠雄氏の作品。
展示された80年代からの衣装が放つ、卓越したアルマーニ氏の美意識とイタリア職人技の妙といったら。ここは私にとっては美のセンスを高めるメディテーション・スポット！感動の余韻は１階のテラスのあるカフェにまで至り、アルマーニらしい上質でミニマムな寛ぎ空間を、コーヒー１杯1.60ユーロから味わえるのです。
最後に、私が思い立っては自転車でフラリと出かけるお気に入りの邸宅美術館「ヴィラ・ネッキ・カンピリオ」を紹介します。市内中心、ミラノ最古の公園「インドロ・モンタネッリ公共庭園」に隣接する古くからの高級住宅地に位置するここは、ミシン会社で財を成したネッキ家の邸宅。
建築家ピエロ・ポルタルッピによる1935年の作品です。建築のモダンさはもちろん、テーブルウェアやリネン類の素晴らしいコレクション、ネッキ姉妹の趣味のよい洗練されたワードローブに至るまで、ミラノのブルジョワ層の高く成熟した美意識に圧倒されます。プールや庭園、テニスコートを眺める上品な小ぶりのカフェは、入場料なしに利用ができるちょっとした隠れ家。疲れた私を癒し、優雅な気分にしてくれます。
日本に比べると、より日常的にカジュアルに利用されているように感じるミラノのミュージアム。きっと、旅人をも温かく招きいれ、楽しませてくれるはずです。
●MUDEC
http://www.mudec.it/
●FONDAZIONE PRADA
http://www.fondazioneprada.org/
●ARMANI SILOS
https://www.armanisilos.com
●Villa Necchi Campiglio
http://www.visitfai.it/villanecchi
