Milano:ミラノ
2016-09-29
アート+モードの香り漂うイタリア的モノづくりの流儀

朝の肌寒さに秋の訪れを感じるミラノ。開放的なバカンスムードから一変、街は一気にエンターテインなシティライフへ人々を誘い始めます。先頭を切るのは、街中に溢れる美術館やミュージアムで行われる数々の企画展ポスターや劇場にかかる垂れ幕の鮮やかな彩り。そしてこの街の風物詩ともいえるミラノコレクションも開幕。芸術とモードの香りに包まれる季節なのです。

そんなムードをさらに盛り上げる素敵な贈り物が届きました。ファッションデザイナーのヴァレリアからの傘です。「どんな天気にも使えるわ」と、自身のデザインによる「しぼり」技術で実現させた生地を纏った唯一無二の傘。彼女のクリエイションは、まさにアートとモードの香りたっぷり。

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ヴァレリア・ボスコは、ファッションデザイナーのフランコ・モスキーノのアシスタント、ジャンフランコ・フェレの右腕を経て、ファッションコンサルタントとして活躍する素敵なマダムです。仕事で頻繁に訪れる日本で、伝統的なしぼり技術に感銘を受けたのをきっかけに、95年よりハンドペインティング、しぼり技術による生地製作を開始。自らのブランド「TUBINI」を立ち上げました。手仕事で丹精込めて作った生地を使った少量生産の美しいアイテム。真に心に触れるモノ作りをスタートさせたのです。

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ハーブや野ばらが生い茂る庭がご自慢の北伊ノヴァーラの自宅兼アトリエで展開される平和なモノづくり。アトリエでエプロンと長靴姿で染色に夢中になる彼女と、そんな無骨なシーンから生まれる美しい生地によるドレスやターバンを纏う洗練された彼女の姿のギャップに、いつも驚かされます。

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心に触れる自然な色彩の組み合わせ、優しく揺れる幾何学パターン、素朴の中の品位、それがヴァレリアの作品に一貫するスタイル。そこにはデザインと職人技が織りなすアートが息づいています。そんな彼女のスタイルは、自宅のインテリアにも及んでいます。モードの最前線で上質に触れ、本物を目にしてきた彼女が選んだ素朴で手触りのあるラグジャリー。彼女の暮らしそのものもまた、人々を魅力するのです。

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ヴァレリアのように個人で少量生産するデザイナーやアーティストたちが活躍するフィールドがイタリアに充分にあるのは、イタリア人の特性と文化に大きく由来しているように感じます。自らの個性とアイデンティティを大切にするイタリア人は、ブランドや流行に捕らわれず、ファッションにも住まいにも、自分らしさを求めたオーダーメイドやカスタムメイドを好む傾向が根強くあるのです。背景にあるストーリーが感じられる奥行きのある古きものや1点ものへの探究心も。

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誰かを真似するのでも、何かに振り回されるのでもなく、自分の個性を大切にできるイタリア人たち。ヴァレリアの作品を通して見るイタリア人の流儀に、またまた触発されました。

●Valeria Bosco
http://www.tubini-valeriabosco.com
Photos: Alessandra Ianniello