Shanghai:上海
2017-01-18
上海のソウルを感じる、こだわりのシノワズリ雑貨

上海に程近い蘇州は、古くからシルクの産地として名高い地。シルク製品や刺繍が発達し、江南地方を代表する特産の一つになっています。洗練されたシルク雑貨を探すとき、私はいつも「アナベルリーシャンハイ」へ行きます。日本人の阿部洋子さんと中国人の馮勃さんが2000年に立ち上げたブランドで、上海随一の観光地である外灘の歴史的な洋風建築にショップを構えています。

1写真提供:ANANABEL LEE SHANGHAI

広々とした店内には、中国でとれる上質なシルクやカシミアを使ったアイテムを中心に、雑貨小物やバッグ、ストール、洋服、ジュエリーなど、多彩な品物が揃います。商品は江南地方の職人や若手デザイナーたちと共に作り上げ、いずれも品のいい中国テイストが特徴。現代のライフスタイルにも合うデザインです。シルク製品は養蚕の段階からかかわり、上海で縫製を行なっているそう。どの商品も細かいところまで丁寧な仕事がほどこされ、温かみがあります。

2

クリエイティブディレクターを務めるのは、創業者の一人でもある馮さん。彼女に商品のデザインについて尋ねると、一点一点のストーリーを丁寧に教えてくれます。「蘇州にある『拙政園』という庭園をご存知ですか? 回遊式の庭園で、立ったときの視線の高さに合わせて園内の随所に借景のための窓がとられています。限られた空間を広く見せるための工夫なんですね。このシルクのクッションカバーはそういった江南地方の庭園から発想しました。窓枠をデザインし、窓の中の素材にオーガンジーを使って奥行きが出るようにしています。正方形のクッションがいかに立体的に見えるか、中国の視覚の美学を表しているんです」

3

内モンゴル産のカシミアを使ったストールや、天然石をアクセントにしたシルクとオーガンジーのビジューストールも素敵です。髪の毛の3分の1ほどの細さの糸を使っているという「200番手カシミアストール」は、やわらかく、美しいシルエットが目を引きます。毎年内モンゴルまで足を運び、工場もいくつもまわって技術の高いところと提携。工場と直接取引しているため、高いクオリティーを保ちつつ他店より価格を抑えられるのだとか。

4
4+

しかし、中国では伝統的な手工芸を受け継ぐ職人が少なくなっているのが現状だといいます。「うちでも手刺繍を入れた雑貨小物の一部は、残念ですが今出ているだけになってしまいます。今と同じ価格でここまで細かい仕事ができる職人さんが減ってきているんです」と、阿部さん。中国の人々や社会の変化の波は、雑貨にも押し寄せているのかもしれません。それにしても、阿部さんや馮さんと話していると、この土地に受け継がれてきた文化に対する深い敬意を感じます。この想いと情熱が、商品の一つ一つに込められているのだなあと思います。

5

上海で暮らすうち、私の身の回りにはアナベルリーのアイテムが少しずつ増えていきました。シルクのポケットティッシュケースに携帯ケース、ポーチ、ストール、ブックカバー。なめらかな手触りのこれらのシノワズリ雑貨を持っていると、いつでも自分のすぐそばに、上海のソウルが感じられる気がするのです。

66+
写真提供:ANANABEL LEE SHANGHAI

●ANANABEL LEE SHANGHAI
住所:上海市中山東一路8弄1号
TEL:021-6445-8218
http://annabel-lee.com/
http://www.annabel-lee-onlineshop.jp/(オンラインショップ)