Berlin:ベルリン
2017-01-31
社交ダンスシーズンのウィーン、週末は舞踏会へ

200年前のウィーン会議にその歴史が由来するといわれるオーストリアの舞踏会文化。毎年11月11日、カーニバルシーズンのスタートから、ウィーンでは舞踏会が毎週末開かれる。オーストリアでは今でも紳士、淑女のたしなみとして、ティーンエージャーの頃からダンススクールに通い、ダンスとマナーを習う人が多いのだそうだ。

1

最初はワルツから、その後だんだんとタンゴやルンバ、チャチャなどレパートリーを増やしていく。ウィーナーワルツには左回りの試験というのもあるそうで、合格すると燕尾服やドレスで社交ダンス界デビューとなる。このところの社交ダンス・パーティーは、国外からの参加者も増えて盛り上がっている。

2エルマイヤー・ダンススクール。ダンスだけでなくマナーも学べる優秀校。3代目オーナーのトーマス・シェーファー・エルマイヤーさんは憧れのジェントルマン。https://elmayer.at/ja/

特にウィーンは1月から3月まで、木金土の夜はどこかしらで舞踏会があり、素敵なレストランで食事をしてから、カッコいい衣装に身を包んで街に繰り出す人を、市内のあちこちで見かけるそうだ。衣装は自前で何着も持っている人もいれば、レンタルする場所もいろいろとある。

3たくさんのセレクションのある貸衣装店フロスマン。裾上げや微調整を1日で仕上げてくれる。http://www.flossmann.at/

舞踏会の中でも一番有名なのがオペラハウスでのオペラ・ボール。その他、チャリティーやダンススクール主催の舞踏会など種類も様々。1月28日、数あるパーティーの中でも特にユニークなレインボー・ボールに行ってきた。男子同士、女子同士、女装あり、男装あり、踊り好きが集まるジェンダーフリーのお祭り騒ぎは今年で20周年を迎えたところだ。

4

会場はショーンブルン宮殿のお隣にあるパークホテル・ショーンブルン。オープニングセレモニーでは同性愛者をサポートするオーストリアやヨーロッパ各国、欧州議会の政治家、アメリカやオーストラリアの大使や外交官などが大勢出席。オープンな社会をアピールする政治的なイベントでもある。その後、オーストリアを代表するセレブ、髭をはやしたドラッグ・クイーン歌手、コンチータ・ヴルストが登場すると、会場が沸きに沸く。2014年のユーロビジョンコンテストで優勝して以来、ヨーロッパ全土で人気を集めている売れっ子だ。

20年間続いているこのゲイ・フレンダリーイベント、実は踊り好きな男性たちが、一般の男女が通うダンススクールが閉まってから夜中に練習していたという話も紹介された。ファンド・レイジング・パーティーで入場料はオーストリア最大の同性愛者団体HOSIの活動に当てられる。

ダンスフロアはもちろん、ワルツからスタート。会場のムードはとても穏やかで、颯爽と踊っている人もいれば、初めてでぎこちない人もいる。ステップを間違えて、他の人にぶつかっても怒ったりする人もなく、実に寛容な雰囲気が漂う。

とびきりオシャレにしているドラッグ・クイーン、タマラ・マスカーラを紹介された。親戚が日本にいることから、大の親日家で、アニメが大好き。ベルサイユの薔薇とかセーラームーン、日本人の私より、最新の漫画は彼女の方が断然詳しい。女装家として尊敬するのは坂東玉三郎という筋金入りの日本通でした!

5黒いスパンコールのドレスで現れたタマラ・マスカラ

大勢の歌手が続々と登場して熱演。ダンスフロアには時にはポップなサンドも流れる。地下にはディスコフロアもあり、正装でおしゃれをしているけれど、古臭い社交ダンスの堅苦しさはなく、誰もが好きな音楽に合わせてそれぞれに楽しむ。始発の地下鉄が走り出す朝まで踊りは続いた。

6

年間を通すと、この街では450ほどの舞踏会が開かれるとのこと。冬の寒さと憂鬱を吹き飛ばすウィーンの社交ダンスパーティは、驚くべきパワーに満ち溢れていた。

●ウィーンの舞踏会情報
http://www.ballkalender.cc/ballkalender-wien.php
●レインボー・ボール
http://www.hosiwien.at/en/rainbowball/info/