サシャ・ワルツは現在のドイツ、コンテンポラリーダンス・シーンでの重要なコリオグラファーの一人だ。1993年にカンパニーをスタートしてから、音楽家、建築家、ビジュアル・アーティストなどと全世界でツアーやコラボレーションを行い、高い評価を得ている。
©Sebastian_Bolesch
彼女のサシャ・ワルツ&ゲスツの初期の作品〈Zweiland(2つの国)〉(1997)がほぼオリジナルメンバーにより、この12月再演となった。
満席の観客席。4日間の公演は早い時期から完売になっていた。
東西統一したばかりのベルリンで、90年代のサシャ・ワルツのカンパニーは衝撃だった。はじめて見た作品〈Alle der Kosmonauten(宇宙飛行士通り)〉は社会主義時代に建てられた団地に住むファミリーを題材にしたドキュメンタリー・ダンスシアターで、当時のごちゃごちゃした、混沌とした様子が描かれていた。
今回の〈Zweiland〉も、統一して間もないベルリンの現代史を日常の視点から捉えた詩的な作品だ。90年代に見た時も、ダンサーなのに歌も歌えたり、楽器ができる人たちって凄いなーと感心したものだ。表面的な美しい身体と踊りではなく、それぞれの個性が国や文化をへだてて卓越したもの。社会とのつながり、そんなサシャ・ワルツの舞台のエネルギーからは元気をもらえる。
ローリー・ユング(左)と鈴木孝子のソロ(右)©Sebastian_Bolesch
このカンパニーにとても興味を持つようになったのは、日本人でオリジナルメンバーの鈴木孝子の存在が大きい。ベルリンに越してから、東京で共通の知り合いがいることがわかっていたが、ベルリン映画祭のコーディネートの仕事で知り合って以来、仲良くなった。ツアーが多く、世界中を旅しているので、会うことも少なかったが、忙しくても興味のある作品や公演はマメに見に行っている。謙虚で辛抱強いプロフェッショナルな姿勢は本当に素晴らしい。鈴木孝子もそうだけど、今回、踊っているメンバーが1997年からほとんど変わっていないのは驚きで、羨ましく思う。精神と身体のバランスを常にキープしていくのは大変なことだろうと思うが、回を重ねてきた自信のようなオーラも感じ、何だか嬉しくなってしまった。
公演後、挨拶に来てくれた鈴木孝子
ちょうど、鈴木孝子から、今、数多く来ているシリアからの難民のために、サシャ・ワルツはワークショップを開いたという話を聞いた。 4~5年前にダマスカスでの公演もあり、たしかベルリンの新聞「ターゲスシュピーゲルTagesspiegel」で中東へ行ったサシャのインタビューを読んだ覚えがある。当時の公演を知っているシリアの若い難民とのダイアローグ。ベルリンの日常も日々着々と変わってきている。
〈Zweiland〉は今年秋にハノイでの公演があり、この先もレパートリーとして続くという。この作品に限らず、世界のどこかでカンパニーの作品を見る機会があれば、是非!
http://www.sashawaltz.de/