大聖堂で知られるケルン。国内でも一番の観光客を誇る街かもしれない。紀元1世紀にローマ帝国の植民地となり、コロニアルという形容詞もこの街に由来する。第二次大戦の空爆によってダメージを受けたが、古い歴史と文化、出版社やギャラリーの多いケルンは、他のドイツの街に比べると小さいけれど、洗練されていて、いつ訪れても発見がある。
ケルン中央駅から歩いて行ける距離で市内を楽しめるのも魅力だ。9月の土曜日、ライン川沿いから、必ず訪れるベルギー地区に向かう途中、ルドルフ広場のオーガニックマーケットを覗いた。規模は小さいけれど、新鮮な野菜やフルーツが充実、ここでラズベリーを買った。甘酸っぱくて美味しい。
ラッキーなことに、年に2度しかないという広場のフリーマーケットにも出くわす。小さなスタンドだが趣味の良い日用品を売っているお姉さんのところで、Insel(インゼル)の本を発見。壁紙のような美しい装丁の文学とアートの本のシリーズで、サイズは小さ目。100年の歴史を有する伝統ある出版物でもあり、コレクターも多い。古本が好きそうな友人へのドイツからのプレゼントにもいいので、素敵なイラストのものを見つけると買っておいたりしている。お姉さんは蝶々の本を10ユーロで売ってくれた。
ベルギー地区は通りの名前にアントワープ、アーヘン、ブリュッセルなどの名前がついていことからそう呼ばれているそうだ。この地区は地元のクリエーター系の人たちが多く住んでいるので、ショップやカフェなどもケルンならではの店が多い。ほぼ毎回行くのがサロン・シュミッツ。カフェ、バー、オーガニック素材にこだわった朝ごはんや軽食を出すMetzgerei(デリ)があり、ここにくるとケルンに来たなーと実感。この日はベーコン、玉ねぎ、リンゴのキッシュと赤かぶのサラダ、レンズ豆のサラダ添えをオーダーした。キッシュはベーコンのしょっぱさとリンゴの甘酸っぱさが絶妙だった。おしゃれな人が訪れる店ではあるけれど、地元の普通のおじさんが新聞を読みながら、朝ごはんを食べるのに利用していたりもするのも、この店が好きなところ。
革製品と丈夫なキャンパス布のバックの店Hackもこの近所にある。小規模のマニュファクチャーで特注のレザー商品も扱う良質な店。ここのキャンパス布のバックは頑丈で重くないため、かなり長い間愛用させていただいてます。
ベルギー地区からショップの連なる街の中心、エーレン通り(Ehrenstrasse)に向かう。世界的なコーヒーテーブル本の出版社Taschenの第一号店からスタート。この通りには『Buchhandlung Walther König』というアートや建築専門の出版社もあって、そちらの本屋は天井に届く本棚まで本がずっしり。そんなに大きな街ではないのにドイツを代表する出版社が2社もあるとは、なんと文化度の高いことだろう。
エーレン通りをひたすら南下する。ファッション系のチェーン店が多いが、昔からのパン屋さん、チーズ専門店、ドイツ料理屋やイタリアンなどのレストラン、そして本屋とバランスの取れたところがこの通りの魅力だ。歩いていて楽しくなる歩行者のための通り。
最後にコロンバ(Kolumba)を訪れる。コロンバは数多くあったケルンのカソリック教会の1つ。戦後、廃墟になっていたこの土地を、スイス人建築家ペーター・ツムトーが、1階をチャペルと廃墟の観覧エリア、上階を中世に遡るキリスト教芸術と現代アートを扱う美術館として完成させたのが2007年。チャペルには瓦礫の中から見つかったマドンナ像が掲げられている。土曜の午後でも市民はひっきりなしに訪れ、ここで平和への祈りを捧げている。心打たれる風景に出会えた。
●Salone Schmitz
http://salonschmitz.com/
●Hack
http://www.lederware.com/
●Buchhandlung Walther König
https://www.buchhandlung-walther-koenig.de/koenig2/index.php?mode=start
●Kolumba
http://www.kolumba.de/?language=eng