Milano:ミラノ
2015-07-19
自然回帰に目覚めるミラネーゼ

パダーナ平原にあるミラノが、かつてヴェニスならぬ水路と橋が縦横に巡る町であったことをご存知だろうか? 水源に恵まれ、多くの農地と農家も存在したミラノの古名は「メディオ・ラムヌ」、「水の間」を意味し、芸術地区「ブレラ」の語源は「ブレイラ(野原)」だ。そう、この街は瑞々しい緑に囲まれた場所だった。とは言え、グレーな空とスモッグとのお付き合いが定番となった今のミラネーゼにとって、そんな光景はつい最近までは夢のおとぎ話。しかし今、ミラノは自然と寄り添ったかつての姿を新しい解釈のもとに蘇らせ始めている。
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その引き金となったのは、まさに現在開催中のミラノ万博だ。「地球に食料を、生命にエネルギーを」がテーマだけに、食と自然環境に焦点が当てられ、ミラノはここ数年に渡り、地球に優しい都市開発をひっきりなしに行ってきた。エコサステナブルな近代的タワービルを続々と誕生させながらも、大掛かりな再緑化運動を同時進行。それに併行し、健康食や自然共存に着目した飲食店がオープンラッシュ! 緑の点が線となり、街には新たな表情、そしてミラネーゼたちにはナチュラル志向が根ざしはじめた。
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久しぶりにミラノに訪れたツーリストを驚かせるのは、きっと29万平米の敷地にシーザー・ペリなど20以上の建築家による高層ビル群が誕生した「ポルタ・ヌオーヴァ」地区だろう。ここにはテラスの植栽の成長がビルの形状を司る集合住宅ビル「ボスコ・ベルティカーレ(直立する森林)」が完成し、米国のアーティストのアグネス・ディーンズを採用した『Wheatfield』作品―5ヘクタールにもおよぶ麦畑―がスカイラインに寄り添って出現。蝶が舞う光景、虫の音を聞く不思議さと癒しといったら。ちなみに今月は市民も参加する麦穂の収穫祭もある。
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一方、ポルタ・ロマーナ地区には17世紀築の農家を復刻させた食のコミュニティスポット「カッシーナ・クッカーニャ」が誕生。「かつてのミラノライフの再生」をキーに、畑と庭を含めた4千平米の敷地に、Km0(キロメトロ・ゼロ)と有機にこだわったダイニングやエノテカ、ゲストハウスが備わる。ビオマーケットや食に関わるラボやイベントはここでの恒例だ。
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そこには香り高いハーブが生い茂り、ズッキーニやトマトを収穫するスタッフの姿がある。ブドウ棚の下では裸足になってワインとアペリティフを楽しむカップルも。
6また、かつての水路の姿が唯一残ったナヴィリオ地区には、この地が豊かな農地であったことを彷彿させるファーマーズマーケット「メルカート・メトロポリターナ」がオープンした。鉄道線路沿いの1870年築の倉庫跡1万5千平米には、選りすぐりの食品店とミニ野菜畑ごときプランターの数々で彩られた屋外のイートインスペースが備わる。田舎風ガーデンランチを楽しむような開放的なムードが最高だ。
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モードやデザインの最先端に触れながら、自然を感じ、気取らないホリデームードに出逢える新しいミラノ。ぜひご体験あれ。

Porta Nuova
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Cassina Cuccagna
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Mercato Metropolitano
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