実りの秋は、過ごしやすい気候もあって何をいただいても美味しく感じられます。まさに食欲の秋。とはいえ、食材はきちんと効能を考えて選びたいですね。秋本番のこの時期は、まず季節の特徴である“乾燥”対策の食材をおすすめします(具体的な食材はvol.5をご覧ください)。そこにプラスしていただきたいのが気(エネルギー)を補う食材や、気血の巡りをよくする食材。いずれもこれから厳しくなってくる寒さへの対策です。
気にはもともとカラダを温める作用や、風邪などに対してのバリア機能のような作用があります。気が足りないと、寒さに耐えられず、風邪もひきやすくなる、というわけです。気を補う食材は肉類だけでなく、秋に収穫される芋類や穀物類、そして銀杏やしいたけ、かぼちゃ、カカオ、なつめなどがあります。魚介類はサワラ、イワシ、サバ、サケ、タラ、ブリ、マグロ、ウナギ、エビ、タコなどです。
気を補う食材を摂るときのポイントは、セットで気の巡りをよくする食材も摂ること。その理由は、気ばかりを補っても巡りがよくないと詰まってしまう、といったイメージでお考えいただくとわかりやすいかもしれません。たとえば寒くなると、それが原因で巡りが悪くなります。そもそも気は血流を促す働きを持っていますので、滞ると本来の役割を果たすことができません。血が滞るとさらなる冷えにもつながりますし、肩こり、月経痛などの症状もでてきます。
気を巡らせる食材には、らっきょう、玉ねぎ、ピーマン、柑橘類(特に皮)、かじきマグロ、サケなどの他、スパイスの八角、陳皮、フェンネルシードなどがあります。そして血の巡りをよくする食材には、黒砂糖、カカオ、栗、にら、青梗菜、なす、パセリ、レタスなどの他、サンマやイワシ、サバ、サケ、ウナギなど。またブドウ、プルーン、ブルーベリー、クランベリーなどのフルーツや甘酒、酢、サフランなども血行をよくします。サバやサケなど、その食材1つで気を補って気血両方の巡りもよくするものはオススメですね。
今回の一品は、まず「イカと蕪のホットサラダ、サフラン風味」。気を補う食材にタコがありますが、同じように思われがちなイカは気ではなく、潤いを補います。まずは乾燥対策をしたいので、今回はイカを選び、同じく潤いを補う蕪を合わせ、巡りを考えたサフランやパプリカを使いました。クリーミーなドレッシングも潤いにつながります。
そしてメインディッシュには気を補うサワラをチョイスして、「サワラのソテー、柿ジンジャーソース」。たっぷりつけて召し上がっていただきたいソースは肺を潤す旬の柿に生姜を効かせたもの。パンにも合うソースです。
そのシーズンまっただ中に必要な食材を使いつつ、次のシーズンに備えた食材選びもしていく。こんな食養生が薬膳の特徴のひとつです。パワーが強い旬のものを選ぶこともお忘れなく。(撮影=安井真喜子)
イカと蕪のホットサラダ、サフラン風味
材料(2人分)
イカ | 1/2パイ分 |
蕪 | 2個 |
A | |
マヨネーズ | 大さじ2 |
牛乳 | 大さじ1 |
サフラン | ひとつまみ |
にんにく | すりおろし少々 |
塩 | 少々 |
こしょう | 少々 |
酒 | 大さじ1 |
パプリカ(赤) | 1/8個 |
セルフィ―ユ | 適宜 |
作り方
① ドレッシングを作る。ボウルにAを入れてよく混ぜ合わせ、サフランをなじませておく。
② イカは胴から足を外し、胴は軟骨を取り除いて中を水洗いし、皮をむいて1cm幅の輪切りにする。足は吸盤を包丁でこそげおとし、適当に切り分ける。蕪は皮をむき、8等分のくし切りにする。
③ フライパンに②と酒を入れて火にかけ、蓋をしてイカに柔らかく火が通るまで蒸し煮する。
④ ①のボウルに③を加え、軽く和えて器に盛り、千切りにしたパプリカとセルフィーユを添える。
サワラのソテー、柿ジンジャーソース
材料(2人分)
サワラ | 2切れ |
タイム | 2枝 |
EVオリーブオイル | 大さじ1/2 |
柿(種なし) | 1個 |
A | |
しょうが | すりおろし 小さじ1 |
白ワイン | 大さじ1 |
レモン | 搾り汁 大さじ1/2 |
塩 | 1つまみ |
こしょう | 少々 |
カイエンペッパー | 少々(1~2ふり) |
作り方
① 柿のソースを作る。柿は皮をむき、へたをとって粗くすり下ろす。小鍋に移し、Aを加えて火にかける。混ぜながら少し煮詰め、とろみがでてきたら火から下ろす。
② フライパンにEVオリーブオイルを入れて熱し、皮に切れ目を入れて軽く塩こしょう(分量外)をふったサワラを皮目から入れる。タイムも加え、こんがりとソテーする。
③ ②を器に盛り、①のソースを温めてから添える。