朝夕すっかり肌寒くなってまいりましたね。自然に目をむけると樹々の紅葉が深まってきているのを感じます。私の一日は、朝一杯のお茶を淹れることから始まりますが、気温や湿度、季節を肌で感じながら、その日の自分に相応しいお茶を選びます。中国茶は種類が多いだけに、様々な製法によってお茶の味や香りが違ってきますから、気候にあわせてお茶をセレクトできるというのはとても魅力的です。
冷たい空気が頬をなではじめるこの時期は、やはり身体がほっこりあたたまる深みのあるお茶を飲みたくなりますね。こんな時におすすめしたいのが、焙煎のきいた烏龍茶です。焙煎をきかせた烏龍茶は数多くありますが、中でも私が好んで淹れているおすすめのお茶をいくつかご紹介しましょう。
【凍頂貴妃烏龍茶】
台湾凍頂山で採れたお茶です。夏に飛来するウンカの影響で、香ばしくも蜜のような独特の香りと、楊貴妃が好んだと言われている果物、ライチのような風味が口の中を覆い尽くし、うっとりしてしまうようなお茶です。蜜香烏龍茶ともよばれています。
【鳳凰単叢】
広東省で採れる烏龍茶。ライチなどフルーティな香りやクチナシの花を思わせるような香りに加え、きりりとした渋味が見え隠れします。秋のすっきりとした空気感を感じながら飲みたくなるお茶です。
【木柵鉄観音】
伝統的な製法で作り続けられている烏龍茶。重みのある焙煎風味にコクのあるしっかりした味わいが特徴的です。寒さが感じられるような今の時期は手放せなくなるお茶です。
そして、せっかくなら美味しいお菓子とともに堪能したいものですね。セミナーでは中国茶に合うお菓子は何ですか?というご質問をよくいただきます。中国茶の世界では、お茶の香りや味が豊かであればあるほど、お茶の味わいそのものを楽しむため、お菓子はどちらかというと脇役として考えられています。そのために、できるだけお茶の繊細な香りや味を損なわないような甘さ控えめのお菓子が喜ばれます。
例えば、クルミやアーモンドなどナッツ類は香ばしい味わいのあるお茶ととてもよく合います。軽く和三盆などでコーティングされたものでしたら、ほんのりした甘みにナッツの香ばしさと相まって、相性抜群です。
『和三盆くるみ』菓心おおすが
ほどよい食感と甘みのあるかりんとうなどもお薦めです。砂糖がけがあまり重すぎない素材の甘さを活かしたようなものは、お茶の香りと味をより一層引き立ててくれます。
『かりんとう』たちばな
また、和風テイストに仕上げた蒸しカステラなどはバターなどを使用していないので、おすすめです。今の時期に出ている栗風味のカステラは、豊かな秋の時間を演出してくれます。
『蒸しカステラ 舞乃華』源吉兆庵
いつものティータイムに、秋を感じるお茶をほんの少し演出してみるだけで、より豊かな時間をお送りいただけることと思います。
今日も素敵な一日をお過ごしくださいね。