季節も小雪を過ぎると、冷え込む日が多くなってきましたね。ひと雨ごとに冬が深まっていくのを感じます。
先日、心と身体があたたまる時間と空間をお届けしたく、中国茶会を開いてまいりました。ここ最近は、あちこちで中国茶会を楽しめる機会も増えてきています。初めての人にとっては、やや敷居が高いものと思われがですが、「中国茶」というテーマは共通していても主催者によってお茶の世界の表現はさまざまで、実に想像力に富んでいます。自由な発想で、そして茶人たちの思い思いの世界観を垣間見ることができますので、機会がありましたら是非、参加してみてくださいね。
さて、この度のお茶会のテーマは白磁と台湾茶。高麗白磁をテーマに陶作活動をしている韓国出身の崔在皓氏とのコラボレーションで開催させていただきました。
最近は、現代作家の中国茶器制作の需要が増えてきており、それに伴い作家さんとのコラボレーションで茶会を開催する機会も増えてまいりました。茶会に参加する人にとっては、素敵な器を見ながら美味しいお茶をいただけるので楽しさ倍増です。一方、茶人にとっては、繊細な香りと味を持つ中国茶を引き立たせるために、相性のいい器選びはとても大切です。
香りを引き立たせてくれたり、お茶の味のバランスを整えてくれたり、茶杯の薄い飲み口が繊細な味わいへ導いてくれたりと、茶人にとってどのお茶でお客様をおもてなしするかを考えるのと同じくらい、お茶に合わせてどんな茶器を使うかはとても重要なことなのです。崔氏の作品は、繊細さとやわらかさを身にまとったようなフォルムと質感で、シンプルな「白」でありながら、すべてを包み込んでくれるような温もりがあります。
お茶会は趣のある古民家で、少しずつ日が暮れゆく時間の流れを感じながらはじまりました。中国茶を楽しむ作法は、まず茶葉の観賞から。千種類以上あるといわれているお茶は色や形などもさまざまです。個性豊かな外観は視覚的にも楽しませてくれます。
続いて聞香、香りを楽しみます。まず、温めた茶壺(急須)に茶葉を投入して、湯気とともに立ち上っていく香りを楽しんでいただきました。匂いたつ香りは心をほぐしてくれる魔法のようなもの。やや緊張気味だったお客様の表情から笑みがこぼれていくのがわかります。そして湯けむりとともに、茶壺の中に注がれる湯の音。静寂な時間だからこそ、この静かに優しく落ちていく湯音さえも感じとれます。
いよいよ茶杯に注がれたお茶を品茶。杯から匂いたつ香りとともに、お召しあがりいただきます。口に含ませ、舌の上でしばらくお茶を転がすように味わっていただくと、ふんわりと広がる花の香りや芳醇な果実のような甘み、ほんのり感じられる渋みなど、お茶によってさまざまな風味をお楽しみいただけます。繊細なのに存在感のある味わいに、自然と心が開放されていくようです。
すっかり夜の帳が降り、外は冬の闇夜につつまれる中、屋内では 火鉢の中でパチパチと炭の弾ける音を感じながら、お茶の時間は続いていきます。しばし時間の流れをゆるめて、自分に意識を向けてみる。五感を開き心を開放させることに身を委ねていく。お茶の時間は本来の私たちのもっている感覚を蘇らせてくれる、最高の時間(とき)なのだとあらためて感じます。
年の瀬も押しせまり、いつも以上に足早に過ぎ去っていく日々ですが、時にはお茶の一服で心あたたまる時間をお過ごしくださいね。(撮影:大森健太、平山佳世子)
茶譜:
杉林渓烏龍茶
凍頂貴妃烏龍茶
木柵鉄観音
茶菓子:
珠玖留美 たねや
核桃棗泥糕 台湾
舞の華 源吉兆庵