teatime
2016-10-05
心を癒すお茶の時間 by 岩咲ナオコ
#14 渋みの後にくる果実の芳香。秋のお茶には鳳凰単叢を

朝夕涼しくなってきましたね。秋の空は遠くまで澄み渡り、さわやかな秋空が広がります。そして何気なく歩いていると、どこからともなく金木犀の香り。目を閉じて耳を澄ませば虫の声。秋ですね。ふとした時に季節の移りかわりを感じると、何だか豊かさが増したような感覺をおぼえます。

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お茶愛好家にとって、四季折々で季節にあわせてお茶を楽しめるというのは、この上ない幸せを感じられるひとときだったりします。自然の紅葉が鮮やかなほど美しい色彩を放てば、豊かな気分になれたり、ちょっと肌寒い日になると、心が移ろいやすくメランコリックな気分になったりしますよね。そんな秋は、心をほっこりあたためてくれるような馥郁たる味や、芳しい香りのあるお茶に手をのばしたくなります。心身を満たしてくれるお茶はたくさんありますが、中でも秋の時期に味わっていただきたいお茶といえば、鳳凰単叢(ほうおうたんそう)です。

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鳳凰単叢は中国の広東省で採られる烏龍茶の一種です。鳳凰山という山の、一本の茶樹からのみ採取されることからこの名前がつきました。複数の茶樹から採取したものと混ぜあわせないのは、それぞれの茶のもつ香りや味が違うからです。一本の茶樹からしか採れないために、生産量はせいぜい2キロ程度。そう考えるととても貴重です。もちろん今は無性繁殖(挿し木方法)で同じ香りのお茶は多く作られるようになってはいますが、鳳凰単叢でも多種多様の香りがあるのは変わりません。

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鳳凰茶葉は褐色がかった茶色に、条形に細くよじれているのが特徴です。繊細ながらも、外見の色合いからは力強さも感じます。口に含むと、香ばしさとともにキリッとした渋味を感じたかと思うと、突然マスカットやライチ、桃、くちなし、金木犀、そしてコクのあるミルキーな甘い香りが口の中に広がってきます。これが人工的な着香によってできた香りではなく、鳳凰山に育っているお茶がもっている自然の香りなのですから本当に驚きます。

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みずみずしい果物の香り、ドライフルーツのような芳醇な香りが充満するお茶は、気品があって華やか。まるで顔全体が一気に秋の香りにつつまれたかのよう。思わず幸せ指数が急上昇するような、天にものぼるような感覚。大げさなようですが、お茶が一杯あるだけで幸せ〜と思える瞬間を味わえるのです。

今年も豊かな秋を堪能してくださいね。