teatime
2016-12-02
心を癒すお茶の時間 by 岩咲ナオコ
#15 寒い日には岩茶。身体が芯から温まって元気が出ます

寒い日が続いていますが、いかがお過ごしですか?今年は早くも東京で初雪がみられ、あまり秋の余韻に浸ることなく、冬が一気に到来した感じでしたね。突然やってきた寒さに体のバランスを崩された方も少なくないはず。寒いのが苦手な私は、冬になる前から寒さ対策を心がけるようにしています。

最近は毎朝、生姜茶(生姜を煮詰めた湯にハチミツとレモンを落として作ったもの)を飲んでいます。朝起きがけにこれを飲むと、身体の芯にポッと火が灯ったようにあたたまります。また、出来るだけ温性の食材(身体をあたためてくれる)を摂るように意識しています。

さて、この時期になると、冬にオススメのお茶は?そんな質問もよくいただくのですが、迷わずご紹介したいのが「武夷岩茶」です。私も寒い冬を乗り切るために常備薬ならぬ常備茶として武夷岩茶を手元に置いています。

1-%e6%ad%a6%e5%a4%b7%e6%b0%b4%e4%bb%99武夷水仙

武夷岩茶とは烏龍茶の一種で、福建省にある武夷山で採れるお茶です。武夷山は福建省の北部に位置する岩山です。険しい岩山がそびえ、その景色はまるで水墨画に出てくる世界のよう。世界遺産に登録されているほど歴史的にも、また自然環境的にも大変価値のある山で、この武夷山にしっかりと根を張って育っているお茶が岩茶なのです。古く宋代(約900年前)には、すでにこのあたり一帯でお茶が栽培されていたとも言われており、烏龍茶の中では最も古い歴史をもちます。

2武夷山と茶畑

岩茶の茶葉の外見は、茶葉が黒く、まるで烏(からす)の羽のような漆黒色が特徴です。そして、龍が空を立ち上っていくようなうねりのある形状をしています。烏龍茶の語源は、そうした茶葉の色や形から来ているようです。

3-%e6%ad%a6%e5%a4%b7%e6%b0%b4%e4%bb%99%e3%81%ae%e8%8c%b6%e8%91%89%ef%bc%88%e5%b2%a9%e8%8c%b6%ef%bc%89武夷水仙の茶葉

岩茶は、岩の窪地や山と山の谷間で栽培されているために、多くの収穫量を望むことができません。それだけに大変貴重なお茶なのですが、一度飲み始めると手放せなくなってしまうほど、岩茶の魅力に虜になる岩茶愛好家も多くいます。

4武夷山の谷間に生える茶樹

岩茶は様々な品種が存在し、それぞれ香りや味わいの変化を楽しめますが、生産量も多く、代表的なのが武夷水仙や武夷肉桂。中でも武夷水仙は最もよく知られている岩茶の一つです。

5-%e6%ad%a6%e5%a4%b7%e6%b0%b4%e4%bb%99%e3%81%8a%e8%8c%b62

焙煎をほどこした深みのある味の中に、華やかな香りが沸き立ちます。その後、口の中に残り続ける甘い後味と香りは岩韻とも言われ、岩茶独特の余韻がいつまでも続くのです。きっと力強さがありながらもその風味に酔いしれてしまうことでしょう。

岩茶は全体的に大変力強いのが特徴です。その力強さに、初期症状として茶酔(頭がフワフワしたり、ボーッとしたりする症状)という感覺を覚えてしまう方もいらっしゃいますが、一方でこのお茶を飲むと気力が充満してきたりもする不思議なお茶です。ただ、武夷水仙はちょっと重いと思う人には、やや軽めの岩茶、「白鶏冠」がおすすめでしょう。岩茶の四大名欉のひとつに数えられ、生産量もごく限られた銘茶です。特徴的なところは、茶葉の縁は白く鶏の鶏冠(とさか)のようにギザギザしており、そのような茶葉の様相から白鶏冠と言われているようです。

6-%e7%99%bd%e9%b6%8f%e5%86%a01白鶏冠

茶葉の外見は、他の岩茶よりも明るめ(褐色)に仕上がっているので、見分けがつきやすいでしょう。明るいオレンジ色の水色をした白鶏冠を口に含むと、岩茶の力強さを残しながらも上品なフルーティな香りがふんわりと充満し、風味もまるで天にかけのぼっていくような軽やかさです。

7-%e7%99%bd%e9%b6%8f%e5%86%a0%e3%81%8a%e8%8c%b6

岩茶を飲むとなぜかとても身体中がぽかぽかしてきて、気がみなぎってくるような感覺を覚えます。茶樹が岩山のミネラル分をたっぷりと吸収し、エネルギーの高い山で育っているからとも言われますが、お茶の発酵を高め、深く焙煎をほどこしていることで、お茶が温性に変化しているようです。科学的なことはわかっていませんが、背中からじんわりと血流がよくなり、にわかに汗ばんできて、身体が芯から温まっていくのを感じます。

冬の寒さ対策に岩茶、機会がありましたら是非お試しくださいね。