teatime
2015-10-02
心を癒すお茶の時間 by 岩咲ナオコ
#06 秋香る花とお茶のマリアージュを

天高く馬肥ゆる秋。空気も澄みきって、過ごしやすい気候ですね。秋という季節は、ちょうど陽の気から陰の気に入れ替わる時期になります。先日、まばゆいばかりに光るお月様を望めた中秋節は、昼と夜がちょうど同じ時間になり、この日から寒露、霜降と冬の準備に入っていきます。中国では古来より、気候のリズムにあわせて冬の備えを始めておくと、体調を崩さずに冬を乗りきることができると言われてきました。

さて、歩いていると金木犀の香りがどこからか漂ってきますね。十字架の形をした小さなお花は、遠くからでも風とともに漂ってきて、ついどこから香ってくるのだろう?とキョロキョロと探してみたくなります。中国では金木犀のことを「桂花」といい、この桂花でお茶を作ったりデザートに使用したりもします。一般的によく使われる花の一つですが、前回(vol.5)ご紹介した花茶の一種でもあります。これにそのまま湯を注げば桂花茶となるわけですが、お茶とブレンドさせた桂花龍井(※緑茶)や桂花烏龍茶なども、よく親しまれています。

1.桂花と烏龍茶桂花と烏龍茶

この季節だからこそ、秋の香りを感じるお茶をお楽しみいただきたいと思いますが、せっかくなら、ご自宅に桂花の樹がある人は、ご自分でブレンドして作ってみるのはいかがでしょう?

緑茶(※中国緑茶が望ましい)または烏龍茶に摘みたての桂花をまぜ、密封して1〜2日置いておくだけ。お茶2に対し桂花1ぐらいの分量で十分です。お茶は香りを吸収しやすい性質をもっています。その性質を利用して桂花の香りを吸着させるのです。ただし、桂花には水分が含まれていますから、密封する時に乾燥剤も同時に入れておくとよいでしょう。あるいは、茶葉と桂花を和紙や半紙などの紙で包んでおけば、余分な水分を吸収してくれます。やさしくほのかに甘く香る桂花とお茶のマリアージュ。秋の香りは、豊かな時間をもたらしてくれることでしょう。

2.桂花烏龍茶桂花烏龍茶

また、桂花は漢方にも取り入れられており、お腹をあたため気のめぐりをよくしてくれる効果がありますから、これからの季節にも適しています。

そしてもう一つの秋の花といえば、菊の花。菊の花を見るたびに、私は秋の深まりをしみじみと感じます。中国では、現在でも風習やならわしを太陰暦でみています。ちょうど菊の花が咲きほこる頃は陰暦九月九日(今年は10月21日)重陽節。陽の数字が重なることから重陽とよばれ、日本では菊の節句とも言われています。

3.菊花茶1菊花茶

菊の花も一般に親しまれている花茶の一つです。菊の花に湯を注げば菊花茶をお楽しみいただけます。花一粒だけでも十分に菊の香りがただよい、まさに東洋のカモミールとも言えそうですね。菊花は、中医学でも薬効成分があるとされ、目の疲れや喉の痛み、風邪気味の時や肺にもよいとされています。徐々に空気も乾燥しはじめていますから、菊花茶をとりいれて、できるだけ肺や喉を養生するようにこころがけたいものですね。

菊花の味に少しクセがあると感じる人は、ハチミツをいれて飲んでみてはいかがでしょうか? ハチミツの甘さと香りによって飲みやすくなり、さらにハチミツも肺を潤してくれる効果があるのでおすすめです。

4.菊花・クコ・緑茶菊花・クコ・緑茶

さらに緑茶やクコの実もプラスしてみると、菊花の秋の香りに加え、さわやかな緑茶とクコの実の甘さが上品に引き出されて、とても美味しいです。さらに急須の中で秋色を満喫できるという贅沢も味わえます。

5.菊花ブレンド茶菊花ブレンド茶

どうぞみなさんも、秋の花と養生茶をお楽しみいただきながら、バランスのある日々をお過ごしくださいね。