北京の暮らしでうれしいのは部屋にたくさん花を飾れることです。以前の人々は、冬に咲く水仙や、5月の牡丹、夏の睡蓮など、鉢植えの花を愛でることが多かったようですが、最近では鮮花の人気も高まり、花市場が人気を集めています。
北京には30軒ほどの花市場がありますが、微妙に値段と品揃え、鮮度が違うので、一軒一軒チェックしながら、その日に買う花を選ぶのはとても楽しいです。今回は花や花瓶のセンスがよく外国人にも人気の東三環路・燕莎橋近くにある亮馬河花卉市場に行ってみました。1階の敷地には、鮮花を売る店が20件近く集まり、足を踏み入れるだけで花の香りに包まれ幸せな気分になります。2階には花瓶や雑貨、食器などの店が並んでいます。
中国語の花の名前もたくさん教えてもらいました。カーネーション=康乃馨(カンナイシン)、フリージア=洋水仙(ヤンシュイシェン)、バラ=玫瑰(メイグイ)、チューリップ=郁金香(ユイジンシャン)、かすみ草=満天星(マンテンシン)。外来種の名前をその音や意味から取ったり、その花の持つイメージで名前をつけているのが興味深いです。
私が最初に北京に留学した94年、街の中に華やかな色がほとんどないことに驚きました。鮮花が売っていないどころか、文房具も洋服も、ほとんど暖色系の絵柄がありませんでした。無駄を省いた無機質なまでにシンプルな生活も悪くはないのですが、どこか殺風景で味気ない思いで暮らしていたのを覚えています。けれども今では、日本と変わらないほど花の種類も多くなり、彩りある暮らしへと変わっています。また、価格は日本の5分の1ほどで、とても気楽にフラワーアレンジメントが楽しめるのも嬉しいです。
この日は、カーネーション50本と、かすみ草を1束買い、値段は100元(約2000円)で、バスケットいっぱいの花を生けることができました。いつも鏡の前に置いて2倍にして楽しんでいます。さらに余った花で、テーブル用の小さなアレンジメントを二つ作りました。北京も花を飾る余裕ある社会へと変化しています。花市場を訪れるたび、留学時代の生活と比べ北京人のライフスタイルが彩られ、洗練されて行く様子を感じます。