Brighton:ブライトン
2016-11-16
海辺の街で熱いのは、ポケモンならぬスノードッグGO!

いま世界じゅうで、スマホを手にしてモンスターさがしに夢中になっている人が多いとか。そんなグローバル・トレンドはどこふく風。いつになく暖かかった10月から11月の2ヵ月間、ブライトン&ホーブのいたるところでポケモンGOならぬ「スノードッグGO」がくりひろげられました。

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レイモンド・ブリッグズの名作絵本を原作に、世界中で大ヒットした短編アニメ「スノーマン」。 ボーイソプラノが歌うテーマソングとともにご記憶のかたも多いのではないでしょうか。その続編アニメ(2012年)に登場するのが、雪だるま犬すなわちスノードッグ。少年の死んでしまった愛犬のたましいが宿っているかのような設定です。アニメではスノーマンに連れられて少年といっしょに空を飛び、ブライトンドームを飛びこえ、ピアに舞い降りてきます。

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というわけでご当地ブライトンの街角に、45頭のスノードッグ(子牛サイズ)と、20頭のスノーパピー(大型犬サイズ)がとつぜん出没しました。ひとつひとつ異なるデザインを手がけたのは地元のアーティストや、学校その他のグループ。それぞれに名前とテーマがあります。「スノードッグ・バイ・ザ・シー」と銘打ったこのイベントは、チャリティーグループ主催によるがん患者支援のための資金あつめイベントです。

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「あれ見た?」「あそこにあったよ!」とけっこうな話題になり、場所を記した地図を片手にスタンプラリーに参加する子どもたちでにぎわっています。というか、大人もけっこうたくさん。こういうものを見かけると、ついいっしょにセルフィーを撮りたくなる心理はなんなんでしょうね? ハンコがないかと見わたしたけど、そんな面倒なもの置くわけないか、この国で。足元のプレートにあるQRコードを読みとって、専用のアプリ上でひとつひとつロックを外していくと、さまざまな特典がもらえます。

いくつか目立ったスノードックを見てみましょう。まずはもとのアニメそのままの姿のスノードッグ。現存する世界最古(?)の映画館を自称するデューク・オブ・ヨークにて発見。

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こちらはブライトン&ホーブ在住セレブとしておなじみのDJファット・ボーイ・スリム。カセットプレイヤー(!)搭載のスノードッグといっしょに。みずからが経営するカフェで、このイベントをサポートしてもいます。

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そしてマリーナにはデビッド・ ボウイとのコラボドッグ、その名も「Bow Wow」が。

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とはいえ、街なかで見るだけならタダ。肝心の資金あつめのほうはといういと? じつはあの手この手でおカネを集めるしくみもけっこうおもしろいんです。

そもそも協賛企業が各スノードッグのスポンサーとなって、店舗のそばに設置してあるのは当たり前。スノードッグをめぐるバスツアー、チャリティ5キロランニング、スノードッグデザインコンペ、限定モデルのフィギュアそのほか、およそ考えつくかぎりの関連イベントやグッズがあって、そのたびにちょっとずつ、ちょっとずつ、おカネがたまっていくしかけ。そして展示期間が終わると、すべてのスノードッグがブライトンドームに終結。オークションにかけられてけっこうなおカネを生むわけです(もちろん入場料も発生)。いわば広告代理店の手法でチャリティがおこなわれていて、じっさいにこれを手がけたのはパブリックアートを専門とするイベント運営会社です。

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ヨーロッパのキリスト教世界はどこでもそうかもしれませんが、この種の資金あつめイベントがたくさんあって、一般社会にチャリティ精神が根づいていることをひしひしと感じます。おもな支援対象は、がん・心臓疾患・難民・ホームレス・子どもの医療費など。いつもどこかで誰かが資金あつめにいそしんでいるのは当たり前。しかもチャリティ自体がどんどん大がかりで継続的になり、たがいにおカネをまわすことで雇用をつくりだしています。支援そのものにあまり関心のないひとでも、楽しめて自然に巻き込まれていき、おカネを出ても欲しい(やりたい)と思えるようなしかけづくりがほんとうにじょうず。日本のチャリティはどちらかというと身銭を切って誰かを助けてあげる一方通行な感じが強いかもしれません。

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ちなみにスノーパピーは、学校単位で購入して子どもたちがデザインしたもの。小さい頃からこういう形で社会参加するのもいいなと思います。

そういえば11月はBBC主催の「チルドレン・イン・ニード」の季節でもあります。これは障害や難病をもつ子どもを支援するチャリティで、そのキャラクターがまたかわいい。眼帯したクマの男の子がパドシー、ほっぺたが赤いクマの女の子がブラッシュ。恒例のテレビ特番を中心にセレブも多数出演して相当な額を捻出するようです。学校によってはこれに合わせて病気の子どもへの連帯をあらわす「パジャマ登校日」をもうける場合も。これもエンジョイ型チャリティの一例。

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そんなこんなでいろいろ買っていると、いつのまにかショウウィンドウは赤・緑のきらきらに衣替え。このままクリスマスセールに突入です。

10photo by Vervate