Stockholm:ストックホルム
2016-07-28
多くの人の大切な瞬間に寄り添う銀細工師の仕事場へ

結婚指輪や記念日の贈り物に選ばれるシルバーアイテム。ここスウェーデンでもシルバーは特別な意味を持っているようです。今回は私が大好きなシルバーアクセサリーを作る銀細工師のカロリーン・リンドホルム(Caroline Lindholm)さんにお話を伺いました。彼女が手掛けるものはアクセサリーだけに留まりません。代表作の一つである木の葉をモチーフにしたシルバーボウルのアスクローヴ(Asklöv)は、ストックホルム市内にある国立博物館にも飾られるほど、国内で注目されている銀細工師さんなのです。

1+Photograph by Fredrik Wahlberg

このアスクローヴはスウェーデンの南部、スモーランド(Småland)の森で見た広葉樹からインスピレーションを受けて出来たそう。「森を散歩している時に、一つの大きな広葉樹が立っていて、その直ぐ横には家が以前に建てられていたような跡があったの。それを見て、この樹が昔の風習で植えられたものだと分かったわ。昔は結婚や出産といったお祝い事があると、お家の直ぐ横に広葉樹を植える習慣があったの。家族を守って欲しいという願いが込められていたのよ」

2Photograph by Fredrik Wahlberg

「スウェーデンでは今でもキリスト教の洗礼式を受けた子供に銀のスプーンを贈るという習慣があるけれど、スモーランドの広葉樹を見て昔の風習を取り入れた新しい贈り物を子供たちに出来ないかなと思って、葉をモチーフにしたシルバー作品を作ったの」

こうして出来た葉のモチーフを施したのがアスクローヴです。彼女のアスクローヴは2015年の切手デザインにも選ばれスウェーデン国内で高く評価されています。

切手©PostNord

カロリーンさんのワーキングスペースも見せてもらいました。ちょうどお客さんから指輪のお直しの依頼があったとのこと。シルバーリングの繊細なデザインや形は、こうしたダイナミックな作業を通して完成するのですね。口から直接空気を送ることで火力に微妙な強弱をつけられるそうです。

作業1

カロリーンさんは銀細工師の仕事を20年続けていますが、今までデザインが尽きたという経験はないそうです。「いつもアイデアが溢れているの。長年温めているものもあるわ。94年の学生時代に思いついたデザインがあって、まだ取り掛かれていないから、今後取り掛かることが出来たらと思っているところよ」と、デザインのことを話しているとき、彼女はとても楽しそうに笑います。

作業2

こうした彼女の素晴らしい才能や技術は、持って生まれたものだけではありません。 スウェーデン国立美術工芸大学(Konstfack)で5年間、銀細工について学んだのち、国内の銀細工師・金細工師が所属するヌーティーダ スベンスクトゥ シルベル(Nutida svenskt silver)というグループに入り、作品を展示会やギャレリーで出展・販売するところからスタートしています。現在は8歳と14歳の二人のお子さんを持つお母さんでもあり、家族のサポートがあるから仕事を続けることが出来ると話してくれました。

カロリーンさん

そんなカロリーンさんにとって銀細工師の仕事とは何であるのか伺ってみると、「誰かの大切な瞬間に携わることが出来る仕事です。結婚指輪や洗礼式に子供へ贈るプレゼント、誕生日プレゼント。たくさんの素敵な瞬間に立ち会えることが嬉しい」と話してくれました。

s_葉っぱモチーフPhotograph by Fredrik Wahlberg

彼女が作る作品やシルバーアクセサリーは、繊細で凛としたデザインに引き込まれます。楽しいと思えることを仕事にすることが大事だと語ってくれたカロリーンさん。銀細工が楽しくて好きだという彼女の想いが作品を更に輝かせるんだな、と納得。「好き」を仕事にしている人、憧れます。

●カロリーンさんホームページ
https://cali.se/bilder/index.html

●ヌーティーダ スベンスクトゥ シルベル(Nutida svenskt silver)
http://www.nutida.nu/sv.html/galleri-nutida-co

●カロリーンさんと2人の女性デザイナーが共同経営するお店
http://happysthlm.se/jp/