teatime
2016-04-06
心を癒すお茶の時間 by 岩咲ナオコ
#12 上海で春の茶会。日本煎茶と中国烏龍茶をつなぐ

中国最大の国際都市、上海。古くから外国との貿易拠点として中国の経済・産業の発展を支えてきただけでなく、海外からのファッションや流行、文化も柔軟に受け入れてきた異国情緒ただよう街です。そんな活気ある街、上海でお茶会を開いてまいりました。

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上海ではこれまでも時代ごとに中国茶文化が栄えてきましたが、ここ最近、新たな意識でお茶に関心がもたれるようになってきています。3/17〜19日にかけて開催されたお茶会 「邂逅 〜春茶会〜」。邂逅とは、めぐりあいを意味します。

お茶は、本来中国からはじまり、長い歴史の中で陸をわたって中央アジアや西アジアへ、そして海を渡り日本やヨーロッパへと世界中に伝播していった飲み物です。その後、各国で独自の茶文化を築きあげていきました。そんな長い時間軸の中で発展してきた茶の道「Road of Tea」をコンセプトに「邂逅 〜春茶会〜」は日本茶と中国茶をつなぐ会となりました。

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茶会は、2つの会場において開かれました。一つは世界のトレンドが集まる淮海路エリアに高品質のメイドインチャイナのブランドを紹介する店を構える「上下」の文化サロン。空間は自然素材を活かした斬新な建築デザインで知られる隈研吾氏が手がけたものです。畳フロアも設えられ、まさにアジアの美意識が融合されたデザインです。

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そしてもう一つの空間は、お茶会の企画者でもある「茶之路」の空間。プラタナス並木の続く旧フランス租界の一画にあります。日本庭園を意識した庭やシンプルながらも侘寂的な印象をもつ、アジアンモダンな空間です。

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今回、紹介したお茶の世界は、日本煎茶席と中国烏龍茶席の二席。日本茶道の代表として世界中に知られるのは茶の湯の世界(抹茶道)ですが、もう一つの日本茶道文化に煎茶道があります。かつて中国から伝わった新しい茶のスタイルが江戸時代に発展し、確立された茶道の一つです。侘寂の境地あるいは、精神性を高めていく抹茶道に比べると、ゆったりとくつろぎながらお茶を楽しむ文人的要素の強いのが煎茶道の特徴です。茶席では煎茶と玉露の2種類をお楽しみいただきました。煎茶は後味にほんのり渋味を残す爽やかな風味が特徴です。一方で玉露は、凝縮された旨味が感じられる味わいをもっています。

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お茶の淹れ方は各流派によって様々ですが、小さな急須を使って、湯の温度を調整しながら甘苦渋のバランスを上手に出し5客の茶碗に注ぎ分けていきます。お越しになった中国人のお客様は、中国緑茶との違いに新鮮な印象をうけると同時に、煎茶道の淹れ方にも大変関心を寄せていました。また、日本の礼法も学んでみたいと正座やお茶の味わい方にも挑戦してくださいました。

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そして、中国烏龍茶席。現代の中国茶愛好家の間で親しまれている中国茶の淹れ方は、もともと明代以降に発展した「工夫茶」が基礎となっています。工夫とは時間をかけて丁寧にいれることを意味します。小さい茶壷(急須)を使う淹れ方が文人の間で流行し、現代まで中国茶の世界に定着しています。

そして、もともと日本煎茶道の源流はこの工夫茶にあるといわれています。日本に伝わり、日本独自の茶文化が定着しましたが、茶道具のサイズ感が似通っているのは、その理由といえるでしょう。また、工夫茶も同じく文人文化を基軸としているため、書や画、花などを愛でながらおおらかに楽しむ気質があふれているのです。ここでは、二種類の烏龍茶を入れさせていただきました。

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はじめに広東省で採られた鳳凰単叢。香りを楽しむ烏龍茶の中でも、最も気品あふれた香りを楽しめる鳳凰単叢。ライチやマスカットのような香りです。器に湯を注ぐと、湯けむりとともに香りが空間一帯に広がり、1煎1煎重ねるたびにお客様からは自然と笑顔がこぼれ出てくるのがわかります。そして2番目のお茶は、1975年製の台灣凍頂烏龍茶老茶。年数を重ねて熟成された深みのある味わいを感じながら、約40年前の記憶をたどっている表情に、お茶というのはあらためて、時間だけでなく時空まで超えてしまう飲み物だなあ、と感じます。

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めぐりあい。かつて人を介して海を超えてお茶の文化が往来したように、今ここにあらためてその路の途を繋げた交流茶会。世界がより小さく身近になった今だからこそ、同じアジアの心をもった仲間として、お茶を通してもっともっと理解し合える関係でありたいと思う時間でした。

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企画:茶之路
主催:「上下」✕「茶之路」
茶人:岩咲ナオコ
撮影:汪滢 + 鄒巍 + 田方方