朝起きると、今日は何のお茶からはじめましょう?そんな問いかけから私の一日ははじまります。
お茶をどうセレクトするかはその時々でさまざまですが、例えば美しい朝日を感じながら起きた朝は、フレッシュな香りを楽しめる清香系烏龍茶や緑茶をいただきます。前日の疲れが抜け切れてない日の始まりは、刺激の少ない身体をいたわってくれそうな老茶やプアール茶を。忙しい一日になりそうな時は、パワーアップしてくれる岩茶など、その時の体調や気分によってセレクトしています。このように朝を過ごしていると、自然と自分の体調や心の変化と向き合うことが習慣になってきます。
さて、梅雨に入り、蒸し蒸しする日が続いていますが、気温や湿度が高くなると、私達の身体に熱や湿がこもりやすくなります。身体の発汗作用や利湿作用が上手に働いてくれればよいのですが、気温が上がったり下がったりの不安定な気候だと、体質によってその作用が上手に機能しなくなり、体がほてったりむくみの原因になります。
特に、男性に較べて女性は低気圧や不安定な気候に影響を受けやすいものです。身体がだるくなったり、頭痛や情緒不安定など、心身の不調が頻繁におこりやすくなるのもこの時期です。ただ心身の不調は病気ではなく、自然界との不調和によっておこるものですから、出来るだけ薬には頼らず、お茶を飲んでみてください。お茶は選び方次第で、その不調和をやさしく整えてくれます。
私がこの時期によく飲んでいるのは白茶です。白茶は茶葉全体が産毛でおおわれて白いことから総称して白茶と呼ばれています。宋代(約900年前)から飲まれていたとされる白茶は、主に福建省福鼎県を中心に生産されていますが、最近は美肌効果や抗酸化作用があるなど、その効果が新たに注目されるようになり、さまざまな地域で生産されはじめています。
白茶の中でも最も希少価値の高いお茶は、芽吹いたばかりの新芽だけを摘み、軽く発酵させた白毫銀針です。茶葉がシルバーニードル(銀針)のような形をしていていることからその名前がついています。繊細な茶葉で、60〜70度程度の低温でゆっくり味と香りを引き出していくため、抽出までに5〜10分かかります。それでも湯の中で茶葉が踊る姿や茶葉から剥がれ落ちた産毛がキラキラとゆらめいている様子をみているだけで癒され、時間が立つのを忘れてしまいます。
湯色はほんのり透明色からほんのり琥珀色で、本当にお茶が十分出ているのかしら?と心配になりそうな色合いですが、ひとくち口にふくむと、さっぱりとした飲み口なのに、後からほのかにやさしい甘みがこみあげてきます。繊細なのに馥郁たる余韻。わかりやすい香りや味のお茶は、一口で多くの人の心を魅了しますが、白茶は謙虚な味わいなのに、もう一度飲みたいと思わせる静かな存在感をもっているのです。
白茶の中でも私が最近とてもハマっているお茶は、雲南省で作られた白茶です。月光白や月光美人とも呼ばれているのですが、摘み取った茶葉を夜の間に自然発酵させてつくっていることからそのような名前がついています。実際に全てのお茶を月の光の下で作っているかどうかはわかりませんが、何だかロマンティックな気分にさせてくれる名前ですね。湯色はやはり琥珀色で、清涼感のある香りのあとから口の中に広がる上品でフルーティな味わいが、もう一杯、あともう一杯と煎が進みます。嗅覚と味覚を研ぎ澄ませ、その香りや味がどこから来るのかを探したくなるお茶なのです。
見た目にも涼やかでさっぱりといただける、まさに夏使用のお茶に適している白茶。医薬同源を生活の中で実践している中国では、特に広東省や香港など気温や湿度の高い南部地域で多く愛飲されています。中国医学の視点からみても清熱または去熱作用(体内の余分な熱を取り去る作用)を持つといわれています。また去湿作用(体内の余分な湿を取り去る作用)もありますから、だる重症状やむくみやすい体調の方にはおすすめです。
ただし冷え性に悩む方などは、できるだけ温かい状態にして飲むことをおすすめします。また、白茶にバラの花をプラスしてみるのもいいでしょう。バラの花はホルモンバランスの整えてくれるとともに、その香りが梅雨の天気で塞ぎがちな気分を和らげてくれるはずです。
さあ今日も一杯のお茶で、さわやかで快適な1日をお過ごしください。