どんな自然も私たちを魅了して止みませんが、岩山はなぜかことに人を惹きつけると思うのは私だけでしょうか。日本の1.5倍の国土を持つスペインも日本同様、東西南北で随分景色が違いますが、あちこち見て回るうちに、なんとなく勝手に「パワースポットだ!」と思うところがいくつもあります。
スペインではいわゆる「聖地」は、岩山の中に修道院があるモンセラットや巡礼の最終地サンチアゴ·デ・コンポステーラのように、キリスト教に深くつながっていますし、「パワースポット」という表現が日本のようにブームなっていません。ですが、自然が作り出す異形にはおのずと人が集まってくるから面白いものです。
そこに必ずしも宗教施設があるとは限らず、要は「風光明媚」な場所ですが、霊感や風水がわからなくても「何かあるわ〜」とビビッと感じる場所。通常の観光に飽きた方にはおすすめです。 アクセスがよくない場所ばかりなので、日にちに余裕のある旅で訪ねてみるのはいかがでしょうか。
ラスメドゥラスLas Medulas
カスティーリャ·イ・レオン州のこの世界遺産は古代ローマの金鉱跡です。ローマ人たちはこの土地に金が出るとわかると、山々内部に縦横のトンネルを堀り巡らしました。トンネルに水を引き込み、水圧で内側から山を崩壊させ下流で金をすくった、その残骸とも言える山々です。ここで産出する金は ローマ帝国を支える重要な資源だったとか 。いまだに付近では砂金取りができるほど。赤いトンガリ帽子のような岩山が夕日に染まる姿は圧巻です。ここに来るとなんとも儚い雰囲気に圧倒され 、芭蕉の「つわものどもが夢の跡」というフレーズが思い浮かびます。
カテドラルの浜Playa de catedral
ガリシア州リバデオ近くの国内ではつとに有名な観光地です。引き潮に合わせ、教会ドームのような浸食した岩々が表れます。洞穴の中で、ガイタ(バグパイプ)を弾いてる人もいて神秘的。フォトジェニックなパワースポットです。潮の満ち引きを確認してから訪問を。
セテニル·デ·ラス·ボデガス Setenil de las Bodegas
アンダルシア州カディス県内陸のこの村には、「建築学上の悪夢」と呼ばれる住宅群があります。洞窟住居ではグラナダのサクロモンテが有名ですが、ここの岩山の垂れ方はずっとグロテスク。夏には住宅内は肌寒いほどひんやりして気持ちがよく、冬は暖かいという利点から昔からこうして人が住んでいました。風水に詳しい人に是非観て頂きたいと行く度に思います。神秘的というか、ちょっと怖いようなパワーがあります。
ペドリサPedriza
ここは恐らくマドリー州内の人しか登らないかもしれません。首都から1時間ほど。ぽたぽたと砂浜のしずくを垂らしたような岩山のカーテンのような山脈。 私は勝手にマドリーのモンセラットと呼んでいます。奇妙なツルツルの岩山に果敢に挑むロッククライマーをよく見かける場所で、一番高いポイントは2000mを越えるので登山は結構大変。途中には「ファンタズマ(妖怪)」と呼ばれる岩場もあったりして、目に楽しい登山になることは確実。
エス·ベドラEs Vedra
こちらはイビサ島の有名な夕日スポットです。海に浮かぶこの岩山を展望できる対岸の岩場にはヒッピーがよくたむろする洞窟があり、原始人さながらに洞窟からもこの巨大な岩山を望むことができます。岩場には柵もなく、お土産店もないのが素晴らしい(突風の日は注意が必要)!夕日がベドラの岩山の向こうにきっちり沈んでくれるのが、まるで出来過ぎなセットのよう。冬でも夏でも誰かしら、夕日を観にやってきます。岩山の迫力は一見の価値あり!