今年は暑さが続いたせいで、例年より遅く10月の終わりにサフランの収穫が始まりました。スペインではカスティーリャ・イ・ラマンチャ州がサフラン栽培では最も有名で、主にクエンカ県、トレド県で作られています。
サフランはアヤメ科の花。通常は10月半ばのたった1週間だけの開花期に、急いで摘み取ってしまわなければならない時間勝負の栽培です。小麦やひまわりなど穀物の収穫期が終わるのが夏の終わり。周りの畑は休耕期に入り裸同然になる中、サフランは春先に球根を植えて10月終わりに開花するという順序なので、農家にとっては一番忙しい収穫期から少しずれ、かつ少量で高価なので効率のよい作物でもあるわけです。
早朝、花が開く前つぼみの状態での収穫がよいとされています。
サフラン産地として有名なコンスエグラでは、毎年サフランのめしべとりのコンクールがあります。花を手前に高く積み上げ、時間内で取り出しためしべのグラム数を競います。手先が細くて器用な女性が、昔からめしべとりの作業を担ってきましたが、コンクールでは子供も男性も参加。 細かく気の遠くなるような作業を見ていると、高価なのも納得です。
めしべとり作業。
めしべとり大会では男性も参加。
生産地スペインでもサフランは高価な食材なので(1g約6〜7ユーロ)、遠慮して着色料を使う家庭もやはり少なくありませんが、一度本物のサフランを使うとその香りの高さに圧倒されます。花の状態では、高級な香水のような香りを放ち、それは畑の中でもふわりとエレガントに作業の人々を包むのですが、収穫後に色のもととなるめしべを3本取り出し、これを乾燥にかけて湿度を飛ばすと、あの濃厚な「黄金が香るとしたらこんな香り!」という高貴な魅力を放つのです。
花が開く前つぼみの状態。
サフランは着色料としてだけでなく、様々な効用が知られています。 生理痛の緩和や(これは医師の処方を受けて正しい量の摂取が必要)、サフランの主要成分黄色色素であるクロシンには酸化防止効果もあるので、老化防止、物忘れにも効くとか。さらにはコレステロールを下げ、抗がん効果、発汗効果の役割があることも科学的に証明されています。 ラマンチャの家庭では 歯痛や口内炎にもよいとも言われ、 最近の女性誌などでは、朝鮮人参同様、サフランの精力剤としての効果についての記事も見かけます。
収穫後、乾燥前のめしべ。
万能薬でもあるサフラン。一般的にはサフラン=パエリアのイメージが大きいかもしれませんが、スペインではスープや肉や魚のソースや野菜の煮物に入れたり、ハーブとしてほんの少量を煮出して飲んだり、紅茶に入れたり、お菓子に入ることも。 高価といえども一回に使う量はほんの数本(すり鉢などで潰して使うのが理想的)で、料理に厚みと格を与えてくれるので、お得感も高い食材なのです。
肉にも魚にもよく合います。
スペインのサフランを購入する際は、是非D.O認定(原産地呼称認定)品を求めてみてください。普段のお料理の格があがり、本物のサフランの崇高なアロマに魅了されること間違いなしです。