この冬は、我が家は皆軽い風邪を一度ずつひいただけで済みました。冬になると、お母さん友達の間で「インフルエンザが流行始めた」「下痢が流行している」「今年のは熱が高い」などなど、活発な情報交換が始まりますが、おばあちゃん世代に子育て支援をお願いしている家庭も多いので、風邪の対処法は家によって様々です。すぐに病院にかけつけて抗生物質が一番!という人もいれば、極端な人では薬に頼らずひたすら安静と栄養のある食事。子供の熱はお風呂に入れて水風呂になるまで待って熱を下げるという家庭も。
スペインには、小さな街でも必ずいくつかの「エルボラリオHerborario」と呼ばれる自然食品や天然サプリを売っている店があります。Herborarioの語源はラテン語の葉っぱの意味の「herbüia」にあり、要するに「ハーブ」を扱うというのが元々の役割で、かつての薬屋さんというわけです。
昨今では健康食品やダイエット製品のニーズが増えるままに、商業的な「エルボラリオ」が増えましたが、なるべく古く、高齢の店員さんがいるところが私は好きです。漢方同様、症状を言うと「こんなハーブを使ってみてください」と勧めてくれます。
風邪のひきはじめの葛根湯に匹敵するのが、スペインではオレンジジュースもしくはレモンにハチミツ。腹痛や食べ過ぎにはカモミールティー(マンサニージャ)。イライラしているならミントティー。消化促進にはアーティチョークの錠剤。婦人科系がなんとなく調子悪いならオレガノを煮出して飲む。腎臓が悪い人、利尿を促すにはイタリアンパセリ(スペインでは八百屋さんでタダでくれます)を、やはり煮出して飲む、等々。
地方出身の友人からは「おばあちゃんの知恵袋」をよく聞き出します。土地ごとに言い伝えられて残っているものは面白いです。
●子供の夜の咳……タマネギを刻んでベットの脇にぶら下げる。これはうちも随分お世話になった療法です。効果テキメン!!部屋中タマネギ臭でも咳がとまってくれるのならおやすい御用!
●車酔いに……オリーブをつまむ。これはワインもあるといいのでしょうか(笑)。アンダルシアに住んでいた頃に聞きました。
●頭痛に……コーヒーにレモンを垂らして一気飲みする。実践しましたが、確かに頭痛はなくなったけど今度は吐き気に襲われました。
●筋肉痛や筋違い……キャベツの大きな葉をアイロンで温めて、患部に当てます。嘘みたいですが効きました。以来うちはキャベツ教です。
●スイカとメロンは夜に食べるな……水分が多いからでしょうか。お招き頂いた家族のお父さんは食後のメロンに不機嫌になっていました。
初夏に各地を巡業する中世市でも、必ずこうしたエルボラリオ屋さんが登場。こちらは葉っぱと香料だけで本格的です。
まるで市販薬を使ったことがないような、中世そのままの生活をしているのでは?というような店番の人たちの、「がまの油」チックな売り口上も面白い。
郷に入っては郷に従え。在住当初、日本人の私の身体にハーブはあまり効かないと思っていましたが、長年住んでみると 身体がここの食べ物と気候で出来上がったようで 、最近は小さな不調はもっぱらハーブで治しています。