Madrid:マドリッド
2017-01-30
島全土が真っ白に染まるお祭り「ロス・インディアノス」へ

イベリア半島から約1500km離れた、ちょうどモロッコの左下あたりにカナリアス諸島はあります。 平均気温は20度前後で気候もよく、美しいビーチと自然に恵まれた世界的なリゾート地。カナリアス諸島は7つの島からなっていて、例えばハワイがそれぞれの島で違う顔を持つように、カナリアス諸島も七島七様。イベリア半島の文化とは全く違った世界が広がります。

カナリアスではテネリフェのカーニバルが有名ですが、この10年ぐらいで急速に有名になってきたお祭りがあります。それがラ・パルマ島の「ロス・インディアノス」。有名なトマティーナが真っ赤な祭りとすれば、ロス・インディアノスは真っ白祭り。 今年は2月27日に開催ですが、通常人口8万人のこの小さな島は、この日だけはその何倍にもふくれあがります。

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祭りはいたってシンプル。スペインでは祭りのときには皆同じ服を着て、一体感を演出する特徴がありますが、この祭りのカラーは白。白ならどんな服でもよいのかというとそうではなく、一応定型が決まっています。男性はグアジャベラと呼ばれる幅広のシャツ。白い半ズボンまたは麻のスーツで、白のパナマ帽も欠かせません。女性はやはり真っ白のコーディネートでコロニアル風の綿や麻のドレスやスカート。刺繍つきの トップやスカートで個性を演出する人もいるし、パナマ帽には花を飾って、時にはレース刺繍の扇子などでアクセントをつけたり。牛追い祭りの「サンフェルミン」にならないように赤いスカーフを首に巻くのは禁止。ビビッドなカラーや黒いシャツ、アロハなど、白以外の服装も禁止というルールです。

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こうして一様に同じ格好の参加者が集まると、まるで時代や場所が違うような感覚に襲われます。まるでキューバかどこかの南米にいるような風景。この祭りにはラ・パルマ島の歴史が深く関わっているのです。

19世紀のラ・パルマでは干ばつ被害で資源も乏しく、生活に迫られた農民たちが大量にキューバに移民しました。当時はキューバにだれかしら家族がいるという家庭がほとんどだったといいます。ちなみに、19世紀後半にキューバに移民したスペイン人は全体で三百万人超。カナリア諸島からも少なくとも5万人が南米へ移民し、その3分の一はキューバへ向かったという史実があります。現代の中東紛争地区からの移民問題を考えると、その規模がすごくリアルに想像できるのではないでしょうか。

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そうしてラ・パルマでは移民となった同郷たちの送金のおかげで、現在の島の経済が立ち上がったという経緯があるのです。お祭りはその頃からのもので、遠方にいる同胞へのオマージュ。それゆえ、キューバスタイルで真っ白のシャツを着て、パナマ帽をかぶります。祭りをリードするのはキューバ音楽。ソン・クバノや、キューバの東部にルーツを持つラ・グアヒラが一日中そこかしこで人々を踊りに誘います。

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お祭りのクライマックスは午後のスペイン広場。手に手にパウダー缶(ベビーパウダー)を持ち、パウダーをかけあって広場中がモクモクに。市役所が用意する巨大なホースがパウダーをあちこちでまき散らし、盛り上がりは最高潮になります。群衆の中に時々現れるラ・ネグリータ・タマサは、黒人女性に仮装した男性ですが、どっぷりとした体格に 南米のフルーツのような 華やかな衣装をまとい 、お祭りの愛されキャラともいうべき存在です。もちろん食事は代表的なキューバ料理「アロス・ア・ラ・クバナ(白米、トマトソース、目玉焼き)」やラム、葉巻(ラ・パルマ島特産品)も欠かせません。

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祭りというのは歴史と風土の賜物ですが、ロス・インディアノスはスペインのお祭りの中でも最もエキゾチックかも。ヨーロッパとアメリカを隔てる大洋とロマン、時代 と人の往来を感じさせるような、いいお祭りです。

●数値出展「カナリアス諸島史」より
http://www.mgar.net/cuba/indianos2.htm

●Los Indianos 公式HP
http://www.losindianos.es/