「今年こそちゃんとエクササイズしよう」と、毎年思うわけだけど。今「これなら私でも続けられるかも」という淡い期待をいだいているのが、とある猫カフェで開催されている「猫ヨガ」クラス。日本の読者の方々には珍しくはないのかもしれないが、ニューヨーカーにはすごく珍しい。というか、そもそも猫カフェそのものが目新しい。
Meow Parlour
現在マンハッタンに猫カフェが2件ある。うち一件は約1年前、もう一件も去年10月にオープンしたばかり。つまり、ごく最近までニューヨークには猫カフェがなかったということ。「食品を販売する店に、生き物がいてはいけない」という厳しい掟があるからだ。ビニール手袋をはめて人差し指でこすって店の隅々まで調べるという噂の食品衛生管理局が、日本の昔のお姑さんより怖い様子で目を光らせている。だから飲食するカフェに猫がいるなんて有り得なかったのだ。
ところが2年ほど前、ニューヨーク、いや全米初の猫カフェが4日間だけオープンしたことがあった。大手ペットフード会社によるキャンペーンの一環で、その時は飲み物を販売するエリアと、猫と遊べるエリアを二重ドアでしっかり区切ることで法の隙間をくぐり抜けた。たった4日間だけのその猫カフェは、一度猫カフェを体験してみたかった人たちがオープン前から長蛇の列をつくり、最高待ち時間4時間の大盛況となったのだ。
2年前の長蛇の列
結局途中であきらめたが、私もその列にしばらく並んでいた。普段はクールなはずのニューヨーカーも、いざ猫の話になるとまさに猫ばか丸出しで、待たされても文句も言わず、窓越しにみえる猫の一挙一動に歓声をあげ、写真を撮り、とろけまくっていたのだ。「ニューヨーカーはこんなにも猫カフェを待っていたのか!」と心底驚いた。「これはビジネスとしていける!」でも「衛生局が許さないよね」と列に並んだ知らぬ同士でうなづきあったものだ。あれから2年。
Koneko Cat Cafe
Koneko Cat Cafeは、日本を旅した時、猫カフェで「人生が変わった」とすら感じたアメリカ人の若者が、24件の猫カフェを訪ね研究を重ねた末、アメリカで初めての「日本式猫カフェ」というふれこみで去年の秋にオープンした。おしゃれな(人間用の)カフェエリアと奥のアウトドアスペースもある猫と遊ぶエリアの間が二重のガラス戸でくぎられている。そのカフェで飲み物を注文して猫エリアに入れば猫カフェとなる。猫エリアへの入場料が1時間15ドル。(要予約)
Koneko Cat Cafe
一方、1年前に韓国系の女性がオープンしたニューヨーク初の猫カフェMeow Parlourは30分5ドル。カフェ部分は半ブロック先の離れた場所で営業しており、飲み物や猫顔マカロンなどを注文すると、スタッフがとりに走ってくれる。
Meow Parlour(以下同)
今回受けてみた猫ヨガクラスはこのMeow Parlourで開かれている。クラスが45分。その前後に計45分間猫と遊べて20ドル(こちらも要予約)。店の人が床にヨガマットを敷き詰めるやいなや、興味津々の猫たちがそれぞれに陣取り始める。そこへ「ちょっとごめんなさいね」と人間たちがあやまりながらいよいよクラス開始。
生徒達は全員一応まじめにクラスを受けるふりはしているものの、猫が通れば写真は撮るは、本来あげているべき腕を下ろして触るわと気もそぞろ。「このクラスにマジでヨガを探求したいという人は来ないと思うのね」と、先生もすでに悟りの境地。確かにヨガに「集中」はできない。「上達」もしないかな。でも、ついつい眉間にしわをよせて頑張りそうになった時に、しれっと通っていく猫の顔や仕草やあくび顔に思わず微笑んで、ついでに身も心もふとゆるむ。ゆるむからこそできることもある。これって結構大事なことなんじゃないかと思う。
まさに猫のあり方そのままに、無理しない、がんばりすぎない。ふわっとゆるくていい感じ。眉間に「しわ」ではなく「花」が咲くような、猫たちと一緒ならそんな笑顔になれる。ヨガに限らず自分の新しい年のあり方も、そんな感じがいいなと思う猫ヨガ体験だった。