日本の育乳ブームにおける草分け的存在で、現在も業界トップを走っている日本の育乳ブラのブランド『Bradelis 』のNY店がマジソン街にある。20年も前、「育乳」などというコンセプトのかけらもなかったNYに進出し、あらゆる人種の女性達の胸の悩みに寄り添ってきた。
「育乳」というと、胸を新たに育てるというイメージだがそうではなく、長い年月サイズのあわないブラをつけたり、あるいは放任し続けた結果、背中、脇まわりにまで流れてしまった「脂肪を本来の胸の位置に戻す」ことを意味する。脂肪は動く。間違った場所に動いていけるなら、本来あるべき場所へも動いて戻ってこれるはず。(確かに!)あるべき姿を形状記憶させるように自分にあったサイズのブラを正しくつければ「育乳」は年齢に関係なく可能というわけだ。20代、30代でも豊かな人ほどその重みが引力の影響をうけるので、1日でも早いに越したことはない。
『Bradelis 』NY店のボディフィッター呉城秋実さんは一目みただけでぴったりサイズがわかったらしい。その手にかかると、霧散していた胸の脂肪たちが一瞬で全員集合!私の胸は全くの別物に変身した。女性の数だけ胸の種類があり、悩みもある。同じ女性でも人生のどのポイントにいるかで、胸に関する思いや状態も変化し続ける。目の前にいる人がどうしたいのか、その大小さまざまな胸の奥にある想いに寄り添い、「胸を集めて30年」。パッションの塊みたいなカリスマフィッターと、進化し続ける商品のクオリティーの合わせ技。
NYでの立ち上げ当初は文化の違いにも驚いたそうだ。「継続は力なり」という価値感がない。瞬間芸。今すぐ目に見える成果を求める傾向が強い。体に局部的対処法でメスを入れる。その結果出てしまう別の不具合をまたメスで解決しようとして陥る整形地獄を垣間みたこともある。そんな環境の中で「育乳」のコンセプトを理解してもらうのは難しい。
でもここ20年で人々の意識は変わってきた。相変わらずファストフードは人気だけど、一方で、当たり前のようにヨガや瞑想をし、食事に気をつける人も増えてきた。そんな中で、アメリカ人の整体師、整形外科医、ジムのインストラクター、洋服のデザイナーといった体のプロたちが、自分のクライアントやモデルを紹介してくれることが増えてきたそうだ。手術をする前に、激しいトレーニングを始める前に、仮縫いをする前に「まずはBradelisに行って胸を本来の位置に戻してくるように」と。「育乳」という言葉こそ使わないが、体のプロたちの中に「わかる」人たちがでてきたということだ。
どんな下着をつけていようと、他人にはわからない。自分しか知らないこと。忙しい毎日の暮らしの中で普段どんな下着をつけているか。それは世代に関わらず「その人の女子力を如実に物語る」と呉城さんは言う。異性のハートをいとめる力という意味ではなく、また「たしなみ」というだけでもなく。自分が女性であることを自分自身が「エンジョイしているのか、あきらめているのか、見ないことにしているのか」
そこで初めて自分は「みないことにしている」族だったんだと愕然とした。結婚し出産もしていながら、何故かどこかで女性性をタブー視しすらしていた自分に改めて気がつく試着室。思えば超細身だった私は女らしいカーブとは縁遠く、そのことでずいぶん傷つきもした。コンプレックスを払拭するために、「私は絶対女を使わない」などと嘘ぶいて一所懸命仕事をした。その途中のどこかで「女らしさ」を葬ってしまったらしい。そんな私が今になって突然手にいれたカーブ&谷間。「どうつきあったらいいんだ?」
まるで人体実験。商品効果が一目瞭然のような見事なカーブを指さしながら、呉城さんは言いきった。「私にとってこれは、異性のためではなく、私が(女性としての)私であるためのものなんです」
たかがブラ。されどブラ。新たに出現した胸の谷間で出会った過去の自分と新しい自分。他人の目を意識して、ではなく、自分のために自分がもっと「女性性」を楽しんでいく。なんだかまた新しい扉がひとつ開いたような気がして、文字どおり胸をふくらませて店を後にした。
●Bradelis
http://www.bradelisny.com/jp/
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