はじめまして、中国茶道家の岩咲ナオコです。春は心機一転、さまざまなことにチャレンジしたくなる季節。せっかくなら美と健康にこだわったものを積極的に取り入れてみたいものです。
ここ最近、台湾茶・中国茶が若い女性たちの間で新たなブームをよんでいます。中国茶は奥が深くて難しいと思われがちですが、実は現代のライフスタイルにはとてもなじみやすいのではないかと思います。お茶の入れ方の難しい作法や、決まり事などはあまりなく、お茶から匂いたつ香りをアロマ感覚で楽しんだり、体調にあわせてお茶をセレクトしたり、可愛らしい小さな急須を使ってプチ本格なティタイムを演出してみたり。中国茶文化には女性の心をときめかせてくれるような楽しみ方が沢山あります。そして、なんといってもお茶を飲んでいる時間は、心が開放され、笑顔の時間が増えるということ。このコラムでは、私の中国茶ライフをご紹介しながら、より豊かに笑顔に過ごしていただけるようなお茶時間をみなさんとご一緒できたらと思っています。
中国茶の魅力は、自然と人知の調和によって生み出されたバリエーション豊富な種類にあります。中国大陸と台灣で生産されているお茶の種類は、1000種類以上もあり、ひとつとして同じ香りや味をもたないのです。「今日は何のお茶にしようかな?」なんて、一日に寄り添ってくれるお茶を選ぶ感覚は、まるでお茶を通して中国・台灣を旅している気分になります。
そして、中国茶の最も醍醐味ともいえるのは「香り」です。バラやくちなしのような花のような香りのするお茶や、桃や梨のようなみずみずしい果実の甘さを感じたり、蜜のような香り、ドライフルーツやナッツ(豆)のような香りがしたり・・・そのどれもが、お茶が本来もっている香り成分から引き出されているから、同じお茶とは思えないほどの豊富な香りを楽しむことができます。そんな中国茶の豊かな香りを楽しみ尽くすために、香りを楽しむだけに存在する「聞香杯」は、台灣で生まれた独特の器です。繊細な香りを逃がさないように、普通の茶杯よりも背が高めなのが特徴です。
出来上がったお茶をまず、聞香杯に注ぎますが、この時点では香らず、すぐにもう一つの器、茶杯に移してしまいます。そして空になった聞香杯に鼻を近づけて、そこから匂いたつ残香を楽しむのです。空になった後も香りが残っているの?とびっくりするかもしれませんが、空になった聞香杯に花や果実や蜜の香りがいつまでも残っているのです。香りを楽しむためだけに開発された杯。何とも贅沢な楽しみ方だと思いませんか?
お茶の香りをかげばかぐほどに、心はリラックスし、満たされていくひととき。中国茶はアロマとお茶時間を同時に楽しめてしまう、まさにティテラピーだとも思うのです。お茶の香りで五感を開放させて、今日もひとつ笑顔がふえる一日をお過ごしくださいね。