日本でもすっかりお馴染みになった単語「アヒージョ」。ニンニクを使ったレシピは、古くはローマ時代のグルメとして名高いアピシウスの書物にもすでに登場しています。スペインでもニンニクは古くから食べられていましたが、面白いことに14世紀にはその匂いゆえ、騎士たちには禁じられていたとか。15世紀にコロンブスの新大陸発見を援助したイサベル女王もニンニク嫌いで有名でした。
貴族階級の評判はさておき、ほとんどの伝統料理にはニンニクが入っているといっても過言ではないほど、スペイン料理には欠かせない素材です。ニンニク名産地のラマンチャ地方では毎年「ニンニク祭り」もあるほど。
ニンニクとオリーブオイルで炒めたものはなんでも「アヒージョ」ですが、家庭で作られるのは鶏やうさぎのアヒージョなど肉が一般的。お肉のアヒージョの場合は強い火力でパッというのではなく、たっぷりのオリーブオイルの中でニンニクと材料を「炒め煮」にする感覚です。そしてバルで楽しむなら、エビのアヒージョが圧倒的な人気です。
首都マドリーでアヒージョの洗礼を受けるなら、「カサ・デル・アブエロ」が断然おすすめです。ガイドブックにも必ず載っている創業100年を越えるエビのアヒージョの老舗。観光客でにぎわう広場「プエルタ・デル・ソル」にも近く、週末夜は立ち食いの人々で一杯に。
店内でガラス越しに作ってくれるアヒージョは、調理時間約2分。ガスの強火でオリーブオイルを温めて、刻んだニンニクとイタリアンパセリ、ひとかけの唐辛子を投入。香り立つところでむきエビを入れたら、さっとかき混ぜただけで火から下ろします。あとは熱くなった土器そのものが仕上げの火入れをしてくれますが、そのグツグツとオイルが煮えている間にハフハフしながら食べるのが正解。
プリッとしたエビの旨味ももちろんですが、エビのエキスの染み出したオイルをパンにつけて食べるのもこの料理の目的です。小さな土器には半カップ強、たっぷりオイルが使われています。このときばかりはダイエットなどと言わずに、滋味の最後の一滴まで食べる覚悟でいてください。だって一回パンをひたし始めると、もう止まらない!
●La casa del abuelo
C/Victoria, 12, 28012, Madrid 営業:12:00~01:00