Chicago:シカゴ
2016-11-10
オノ・ヨーコさんのパブリックアート完成式典が開催

アーティストのオノ・ヨーコさんが手掛けたパブリックアート作品「SKYLANDING (スカイランディング)」の一般公開セレモニーが10月17日、シカゴ南部のジャクソン公園にて開催され、約500人がオノさんを囲みながら、蓮の花をモチーフにした高さ3.7メートル、幅1.5メートルからなる彫刻のリリースをお披露目する式典を見守りました。

1-credit_-marc-monaghan7photo by Marc Monaghan

オノさんは黒い服、サングラスに帽子というトレードマーク姿で式典に出席。白い布で覆われたステンレスの蓮の花びらをダンサーらが取り囲み、コンテンポラリーダンスを踊りながら布を取り去ります。

2photo by Marc Monaghan

音楽はオノさん作詞作曲の歌「ライジング」を、タツ青木さん率いる地元のジャズ・バンド「ミユミ・プロジェクト」がアレンジして演奏。黒人女性歌手のディー・アレキザンダーさんの声は、鳥肌が立ち涙がでるほど深みがありました。

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彫刻が現れた瞬間、オノさんは微笑みを浮かべ拍手。ダンサーらが蓮の花びらを包容した時は、オノさんの寛大さと作品の素晴らしさが伝わり、感慨無量の一瞬を共有。演壇に立ったオノさんは「このスカイランディングは、空と地面が出合う場所。過去について学び、平和とハーモニーのある未来を一緒に作り上げるために人々が集会する場所」というメッセージを伝えました。

4-credit_-marc-monaghan13photo by Marc Monaghan

この式典の広報係を務める者として、セレモニーが滞りなく行われることを願いつつ、緊張しながら会場でメディア対応をしていると、地元のテレビ局、新聞社、またNHKなど日系メディアの記者らも、オノさんのメッセージ性のある作品と人柄に感動したと目を輝かせていました。式典にはシカゴのエマニュエル市長とご夫人、ジャクソン公園周辺の市議員ら、またシカゴの芸術界を代表する来賓らも出席。国際的な芸術家としてのオノさんの偉大さを改めて認識させられます。

5-credit_-marc-monaghan15photo by Marc Monaghan

このスカイランディング・プロジェクトは、オノさんとシカゴの非営利団体「プロジェクト120シカゴ」の共同制作によるものです。12枚の蓮の花びらの彫刻が恒久的に設置されたジャクソン公園は、1893年にシカゴ世界万博が開催された場所。この万博のために日本は木造の建築物「鳳凰殿」を建て、万博後シカゴ市に寄贈し、日本文化を学ぶ場所となりました。「鳳凰殿」は第2次世界大戦後の1946年に、放火で消失してしまいましたが、1930年代にその隣に造られた日本庭園は、現在もシカゴ公園局によって維持されています。

6-credit_-marc-monaghan18photo by Marc Monaghan

2013年には万博120周年を記念し、「プロジェクト120シカゴ」と公園局により桜の木120本が植樹され、万博跡地は「鳳凰の庭園」と命名されました。これを耳にしたオノさんがジャクソン公園を訪れ、「プロジェクト120シカゴ」の創設者ロバート・カーさんに面会。日米交流の場として活用された跡地について学び、平和を象徴するアート制作を決意したのだそうです。そして2015年6月に「Grand Healing Ceremony」と名付けた着工式を行い、彫刻制作を公表。消失した「鳳凰殿」の跡地を、世界平和への祈りを込めた集会の場として活用してほしいと語りました。

オノさんと共にこのプロジェクトを実現したロバート・カーさんは、約20年間ボランティアとしてジャクソン公園の再開発に尽力している弁護士。学生の時に日本に留学し、弁護士として日本で勤務した経験があり、日本語を流暢に話します。かつて愛知県にある明治村を訪れ、東京帝国ホテルのオリジナルに出会ったことで、アメリカの名建築家フランク・ロイド・ライトが「鳳凰殿」の影響を受け日本に行ったという事実、また、ジャクソン公園が歴史的な場であることを知ったとのこと。そして後に、公園を歴史のある重要な場として見直すべきと有識人らに協力を呼びかけ、エコシステムを取り入れ、経済的、文化的にも豊かな公共スペースにすることを目標に、公園の再開発事業を進めています。この公園には、オバマ大統領図書館の建設が予定地されていて、さらには「鳳凰殿」を立て直すというプランもあり、今後は観光地としても注目を浴びることが予想されます。

credit_-marc-monaghan11_%e3%83%9c%e3%83%96%ef%bd%a5%e3%82%ab%e3%83%bc%e6%b0%8fphoto by Marc Monaghan

スカイランディング・プロジェクトの一環として、オノさんは13枚目の蓮の花びら「Mended Petal」もデザインしました。消失した鳳凰殿の跡地を見た際に、傷ついた場所を癒したいという想いから、壊れた物を修復する日本の伝統的技術の「金継ぎ」を採用。その修復したステンレスの花びらの彫刻を、シカゴ美術館に寄贈しました。10月18日にはシカゴ美術館でその贈呈式が行われ、オノさんは金継ぎの部分を大事に手で触りながら、作品への思いを表現しました。

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また、世界中の人々が願いを書き込めるサイト「skylanding.com」も作られました。オノさんのアート作品には、願い事がテーマとなったものが多く、このサイトも書き込まれた願い事が多くの人にシェアされるオンライン・コミュニティになっています。オノさんとスピリチュアルに永久に繋がり、世界の争い事が早く収まるようにという願いを書き込みました。皆さんも是非、願い事を書き込んでください。日本の素晴らしい芸術文化を世界へ発信するオノさんは、日本が誇るべきスポークスパーソン。このプロジェクトにかかわれたことに、深く感謝しています。

9-credit_-marc-monaghan16photo by Marc Monaghan

●シカゴPBSによる「スカイランディング」式典のニュースレポート
http://www.pbs.org/video/2365871803
●プロジェクト120シカゴについて
http://www.project120chicago.org