天気がいい休日は郊外へ出かけたくなります。そんな時しばしば訪れるのは、ブライトン近郊のルイス(Lewes)という小さな町。電車でたった15分ですが、華やかな海辺のリゾート・ブライトンとはまったく違った雰囲気で、旅気分を味わわせてくれます。
ルイスの魅力のひとつが歴史です。ヘイスティングスの戦いに勝った征服王ウィリアムが、イングランドにノルマン系の王朝を建てた「ノルマン・コンクエスト」……なんだか世界史の教科書で習った覚えがありませんか? ヘイスティングスの戦いで功績のあったノルマン貴族が征服王からルイスの地を与えられ、ここに今も残る城を築きました。ルイスは13世紀の第二次バロン戦争の決戦場としても知られ、城からは「ルイスの戦い」が繰り広げられた丘を一望できます。
歴史の町ルイスには、城だけでなく古い建物も多くて、とくにメインストリートには15世紀頃の建築物がいくつか残っています。その名もずばり「The Fifteenth Century Bookshop」もそのひとつ。地面にめり込んだようなこの店、低い入り口をくぐるとおとぎの国……ならぬ、子ども向けの本やポスター専門店でした。『コモン・センス』を著し、アメリカ独立の父といわれる思想家トマス・ペインが住んだ家も15世紀のもの。そうした中世の雰囲気を残す町並みを歩き、石畳の狭い坂道にいざなわれて散策していると、個性的なショップややハッとする景色に出くわす……これがルイスの醍醐味のひとつです。
ショッピングも充実しています。小さな町にしてはアンティークショップが多いのが特色で、海外から買い付けに来るバイヤーの姿もちらほら。複数の業者が小スペースごとに出店する「Antique Market」「Antique Centre」がいくつかあるので、テイストの異なる商品を一度にたくさん見て回ることができます。また、工場を改装した「The Needlemakers」は、ハンドメイドのジュエリー、ヴィンテージのファッション・雑貨、スタジオ、カフェなどが同居するとても面白い場所で、私はルイスに行くたびにのぞいていきます。
お腹が空いた頃には、メインストリートからウーズ川に向かって下り、カフェやレストランをのぞいてみましょう。クリフ橋のまわりは、野菜・くだもの・スナックを売る露天商が出て、パフォーマーが出没し、アンティークショップと飲食店が建ち並ぶルイスのもうひとつの中心地。いまやイギリス全土に店舗をもつまでになった人気レストランBill’sはここが発祥の地。この第一号店は、クリフ橋べりの賑やかな雰囲気によく溶け込んで、とても感じがいいと来るたびに思います。
最後に、ルイスに来たらどうしても避けて通れないのがビール。サセックスのみならず、イングランドで広く知られるブルワリー「Harveys」の故郷なのです。いまもその工場と直営店とパブが、橋まわりに陣取っています。今回はパブに寄る時間がなくなったので、前述の思想家トマス・ペインの名を冠したエールを買って、家で晩酌にします。