私が三日とおかずに出かけるのが「The Level」と呼ばれる公園。わが家のチビっ子のエネルギーを消耗させるために、なくてはならない存在です。天気さえよければサンドイッチをもってこの公園に出かけるのがもはや日課のようになり、足にはすっかりサンダル灼けが。広いプレイグラウンドに隣接して水遊びができる噴水エリアがあり、夏には小さな子どもたちが素っ裸で走り回っています。そのまわりには気持ちのよい芝生も。本格的なイタリアン・カフェもあり、午後になると親子連れで混み合う日も珍しくありません。
特筆すべきは公園の随所にみられる植栽です。ラベンダーやゼラニウムなど、比較的ローカルかつあまり手間のかからない宿根性の植物を多く使って、地味ながらとても風情のあるイングリッシュ・ガーデンを実現しています。じつは、これはサセックス大学と協同でミツバチとチョウにやさしいガーデンをめざしたもの。人間による開発が生態系をこわした影響で、受粉を手がける昆虫の減少が心配されている昨今、「ハチを守れ」は世界的にも大きな潮流です。このガーデンは今年、イギリス国内の「ハチにやさしいガーデン」ベスト15のひとつに選ばれました。
ここまでが「The Level」の南半分のおはなし。その北半分は、スケートパークとさらに広い芝生が広がります(もとはクリケット場だったとか)。南の親子連れに対して、北はスケボーをかついだ中高生(もちろん年齢制限はありませんが、やっぱり大人は少ないかな)が汗を流しているわけです。スケートパークには夜10時まで煌々と照明がともっています。
このひじょうによくできた「The Level」、実はつい2年前に再生プロジェクトを経て生まれ変わったばかり。それまでは荒廃してうす暗く、麻薬の密売者が出没する多少危ないエリアだったのです。この公園の再生はブライトンでもとても評判がよく、全国レベルでも評価されて、今年のランドスケープ協会賞を受賞したほど。
さらに昨年、「The Level」の西隣に「The Open Market」が創設されて新たな風を吹き込みました。このマーケットは常設の店舗のみならず、毎週、ローカル製品を売る小規模のスタンドが出たり、アンティークフェアをやったり、フェイスペインティングやクラフト教室など子ども向けのイベントを打ったりと、さまざまな趣向をみせてくれます。
「The Level」から西に向かってマーケットを通り抜けると、スーパーマーケットや安売りの店が並ぶロンドン・ストリートに出ます。この通りもちょっと雰囲気が悪くなっていたのですが、「The Level」やマーケットができてから、家族連れが増えて客層や人の流れが変わってきました。もちろん良い方向に。その結果、環境がよくなり、商店も活性化し、周辺の地価が上がり……とこのエリアに大きな変化がおこったわけです。
たかが公園、されど公園。児童公園やスケートパークは決して多大な予算をかけた派手な建設工事ではありません。箱モノ施設を建てるのではない、低予算でできる地域活性化のお手本を見る気がします。