Brighton:ブライトン
2015-09-18
伝説の『さらば青春の光』を追想

9月に入って気温もすっかり下がり、海からの湿った秋風が寒いブライトンです。ビーチでは夏じゅう野外の映画上映がおこなわれていましたが、先週末でそれも終了。トリを飾ったのは、ブライトンを舞台にした1979年のイギリス作品『さらば青春の光』でした。ブリティッシュ・ロックのファンならご存じかもしれません。ロックバンドThe Whoがプロデュースし、1960年代の音楽やモッズ(mods)と呼ばれるファッション・カルチャーを全編にちりばめたこの作品、すでにカルト・クラシックといってもいいでしょう。一部の人にとっては、ブライトンといえばすなわち「モッズの聖地」なのです。

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野外映画の会場となったビーチのすぐ脇には、奇しくも映画の中でモッズたちがスクーターを乗り回したマデイラ・ドライブがあり、かれらがたむろっていたコンクリートの円柱が並ぶ歩廊がみえます。「今日はもしかして映画を観にくるのかな?」と思ったら……いるいる、まさに映画のシーンと同じ場所で、近隣一帯から現代のモッズたちが大集合! 

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細身のスーツ(初期ビートルズのような感じ)とミリタリー・パーカーで決め、ミラーで飾り立てたスクーターに乗って。キツネのしっぽのチャームやイギリス空軍の円形マークなど、モッズ・アイコンも健在。映画の上映までバーで一杯やりながら、スクーターやファッションを見せびらかしておしゃべりに興じるモッズたちに、目抜き通りが占拠されている状態です。すごい熱気で、見ているほうが引き気味に。バーのBGMはもちろん、The WhoやSmall Facesの曲を大音量で流しています。

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すでに映画の公開から30年。往年のモッド・ボーイも還暦を迎え、細身のスーツがすでに細身でないかたも多数。そんな親爺たちが後部座席に古女房もとい元モッド・ガールを乗せ、派手なスクーターでブイブイいわす姿には、思わず目をみはってしまいます。はっきりいって、コスプレ老人会の観もいなめない。というより、シルバー暴走族? あちこちでエンジン音がペコペコ、クラクションの音がプカプカと響きます。いやあイギリス人って、けっこうアホだなあ……。しかし、いい歳をしてこんな遊びしてるのって、なんだか楽しいじゃありませんか。人生の秋、快晴なり。

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肝心の映画のストーリーですが、主人公はロンドンで単調な生活を送るモッズ青年、ジミー。モッズたちはかねてロッカーズ(黒革のスーツにオートバイ)と対立していたが、8月末のバンクホリデーに両グループがブライトンに集まって大乱闘になる。このとき、ジミーはかねて想いを寄せていたステフに近づき、またカリスマ的なモッド・ガイ、エース(演じたのはスティング)と知り合いになる。しかしその後、アンフェタミン使用が両親にばれて家を追い出され、ステフには去られ、仕事を失い、スクーターは事故で壊れ、窮地に陥ってしまう。輝いていた日々を取り戻そうとするかのように、ジミーはもう一度ブライトンに向かうが……。あとは本編をご覧ください。

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実際に1960年代には、ブライトンをはじめとするロンドン近郊の観光地で、モッズとロッカーズが衝突を繰り返したことは有名です。そんなムチャぶりも今は昔。映画の上映は夜8時からなので、当日は遅くまで、大人のモッズたちのパーティが続いたことでしょう。

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