NewYork:ニューヨーク
2015-07-19
セントラルパークの森の奥へ

「エネルギッシュなニューヨークが好き」と、訪れる友人たちは言ってくれるけれど、日々そこで暮らす人たちにとっては、そのエネルギーがストレスの原因になったりする。だからこそ、「大都会のオアシス」セントラルパークの存在は大きい。しかしながらそれですら、オアシスというには賑やかすぎる時もある。そんな日は、森へ行こう。セントラルパークの中の森へ。
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セントラルパークは街のど真ん中、南は59丁目から、北は110丁目まで南北約4キロにおよぶ巨大な都市公園。その一番北の端に、ノースウッズ(北の森)と呼ばれるエリアがある。小径を少し歩いていくだけで、高いビルも全く見えなくなる。深い緑の中、大都会のノイズが少しずつ遠くなり、突然鳥のさえずりに切り替わるような瞬間がきてハッとする。一瞬にして郊外の森にでもテレポートされたような気持ちになるからだ。ほんの数分で。涼しげな音に誘われて歩いていけば、小さな滝に遭遇する。その水際の岩の上で、瞑想をする人が最近増えているような気がする。
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夢を壊すわけではないけれど、セントラルパークは全エリア、綿密な設計に従い人間の手で作られたもの。この森、この滝までもが。水道の栓を止めるようにこれらの滝の水も止めることができるらしい。「なーんだがっかり」という人もいるかもしれないけれど、私はかえって「だからこそすごい」と思う。

150年ほど前、それこそエンパイヤーステイトビルも自由の女神もまだなかった頃に、「大都会の喧騒やストレスを逃れて、自然の良さを味わってもらえる場所、特に旅行に行く余裕のない人たちこそが自然に触れる場所を作りたい。」と、住む人たちのことを思って抱いた壮大なビジョンを、実現した人たちがいたのだ。

押し寄せる移民でその人口が爆発的に急増していた当時と今では、人々の生活もストレスの内容も違うだろう。それに当時、一番その自然を必要としたであろう人たちが住んでいたのは、ずっと南のエリアで、実際は遠すぎてそう頻繁には利用できなかったかもしれない。けれど、計画に携わった人たちのビジョンが一番形になっているのが、セントラルパークの中でもこのエリアだというのはわかる気がする。150年後のニューヨーカーたちがそこで瞑想するようになるとまで予想したかどうかはわからないけれど、彼らのビジョンの恩恵を、今を生きる私たちが受けている。

長い歴史の中では、管理が行き届かずかなり危険な時代もあった。今でもひと気のないエリアでの単独行動には注意が必要だとは思うけれど、今が、セントラルパーク史上ベストの状態と言われていて、次世代を念頭にいれたプランニングが続いている。
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森の中で、静かに時間を過ごすもよし。近隣エリアの豊富なアクティビティーを楽しむのもよし。近くには、市営のプール(冬はスケートリンクになる)もあるし、ハーレムミーアという名の池もある。これも人造池だが、かつて人間が提供した環境にたくさんの命が住むようになった。亀をはじめ、バスやブルーギルといった様々な魚が生息していて、無料で魚釣り(キャッチアンドリリースのみ)もできる。チャールズA.ダナ.ディスカバリーセンターでIDを見せれば、無料で竿を貸してくれるし、餌(トウモロコシ)も、もらえる。
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また、センター前の広場では、夏の間中、日曜日の午後には「パフォーマンスフェスティバル」と題して、コンサートとダンス(踊るのは観客)の催しが、これも無料で開かれている。サルサ、マンボ、ジャズ、ゴスペル、カリビアン、アフリカン、、、とエスニック色あふれる音が楽しめる。演奏が始まると、待ってましたとばかりに老いも若きも踊り出す。観客の中には、そのリズムがDNAに刻まれているにちがいない人たちも多く、彼らのダンスがこれまた半端じゃない。「移民の街、人種のるつぼニューヨーク」を改めて実感する瞬間でもある。子供達にステップを教えるのはどこの家もパパの役目らしく、リズムにのせて、笑顔がはじけていた。