Nice:ニース
2016-11-28
2年経っても忘れられないシャテニエ(栗)のハチミツ

「パンの国で、パンに合うハチミツとオリーブオイルを探す」。この目的を持ってフランスに降り立ちました。一口に「ハチミツ」「オリーブオイル」といっても生産地、生産者、採取年、(ハチミツは)花や木の種類でも味や風味が変化します。口がいくらあっても足りません。

そんな中、2014年にステイ先のVICHY(ヴィシー)で出会った「パンに合うハチミツ」がありました。口にしてしばらく夢心地に浸るほどの香り、風味に衝撃を受け、養蜂場のムッシュ(ご主人)DANIEL GELETA氏を訪ねたほどのハチミツです。近隣の村のみの販売、地方配送も行ってらっしゃらないので、直接赴かなくては口にすることができないという、まさに夢に出てくるハチミツ。2年を経ても忘れられないその味を求めて、再び養蜂家を訪ねてきました。

1採蜜場の前に広がる大地Perrecy-les-Forges(ペルシー・レ・フォルジュ)とハチミツ

VICHY(ヴィシー)はニースから北西に車で6時間、養蜂場はさらに北東に1時間半上がったPerrecy-les-Forges(ペルシー・レ・フォルジュ)という村にあります。GELETA夫婦と息子さん、娘さん夫婦で営んでらっしゃいて、今回はマダム(奥様)が迎えて試食させてくださいました。

2年間、フランスの数多あるハチミツを試食してきても「やっぱりこれだ」と思える甘み・苦味・渋みが奥底からぐわっと込み上げてくる、なのに心地よい香り。味わいは、お醤油のように、単体では才能を持て余してしまう凝縮した濃厚な旨味。お寿司に醤油が必須であるように、パンにはのDANIEL GELETA氏のハチミツがやっぱり合います。

今年は異常な降雨量で、通年の1/6の収穫だったそうですが、風味が2年前に初めて口にした時以上に力強いのは、過酷な環境の中に生き残ろうとした植物の生命力からなのかもしれません。

2左:2014年訪れた時のムッシュ(ご主人) DANIEL GELETA氏 右:2016年はマダム(奥様)が採蜜場を案内くださいました。

このハチミツ、種類はシャテニエ(栗)の木の花から採れたものです。一般的に栗のハチミツは、日本では日常慣れ親しんでいない苦味の強い香りで敬遠されているようで、あまり目にしません。実はフランスでも個性的なハチミツというスタンスですが、どのお店の棚にも置かれています。美食家、ハチミツ愛好家、レストランのシェフやパティシエを虜にしています。

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【DANIEL GELETA氏が採取するシャテニエ(栗)のハチミツ】

■色:
濃い琥珀色

■香り、風味:
「花蜜ではなく樹液じゃないの?」と思うほどに花(華)やかさはありません。が、漢方薬を炒った(試したことはありませんが)ような重厚な苦味と香ばしさ、それに負けない甘美な香りが相まって、人を酔わせる芳香を放ちます。この苦味と甘みがパンの(小麦の)甘さ、香ばしさと溶け合い、パンがまるでカラメルをまとったお菓子のように変化するのです。

■結晶化:
なかなか結晶化せず、とろみのある液状(これはシャテニエ(栗)のハチミツがブドウ糖よりも果糖の割合が高いためで、血糖値が上昇しにくいのだそう。”DANIEL GELETA氏”のハチミツは全く結晶化の気配がありません)。

■効果:
フランスではシャテニエ(栗)のハチミツは血液循環の促進、傷治癒にとても効果的といわれています。

■パンとのおいしい食べ方:
どのパンにも不思議と合いますが、パンを軽く焼いて香ばしくするとよりカラメル感と風味が増します。口の中でジュワっとするくらいパンにたっぷりしっかり塗りつけて染み込ませるのがポイント。

またしばらく来られないので、今回は贈答用にも多めに購入。来年は多くのみなさんにお届けするために引き続き進みます。

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VICHY(ヴィシー)の市場でパン、チーズ、ワイン、オリーブオイル、そして(市場では売られていない)DANIEL GELETA氏のハチミツ。VICHYはフランスのおへそあたりにあり、東西南北、近隣農家の食材がいろいろ市場で売られています。