NewYork:ニューヨーク
2015-09-10
NYで“平和のための着物デー”

着物姿で世界を2周半旅した若者が、先月末ニューヨークを訪れた。それは伊藤研人さん。旅の体験から模索確信した地球の未来ビジョンをシェアし、行動している。NY在住の松岡かおるさんが「NY kimono Day」と銘打ったイベントを企画。多くの人が着物やゆかた姿で集まり、研人さんと一緒にロックフェラーセンターからタイムズスクエアまで歩いた。

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中にはアメリカ人の姿もちらほら。日本語も堪能な女性は、途中で襟のあわせがまちがっていることに気づき、なんとタイムズスクエアのド真ん中でいったん脱いで、自力で着直したのだからあっぱれ。アメリカ男子も負けてはいない。アニメではなく浮世絵が入り口で、日本文化、特に着物を着ることが大好きになったという19才の青年も、「日本のことを知ってもらう良い機会」と紬の袷で汗をかきつつ参加してくれた。

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付近にいる人たちが集まってきては撮影大会となる。タイムズスクエアで ”Kimono for Peace!” (平和のための着物!)とみんなで声を合わせてビデオ撮りをしていたら、たまたまそこにいた国連のビデオ制作チームから、その場で出演を依頼されたりもした。着物の力おそるべし。

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それにしてもいったい伊藤研人さんは何故わざわざ着物で世界を旅することにしたのか。異国の地で暮らし旅するうちに、この世の争いの原因が、無知による恐怖だとするなら、まずは互いを理解しあうことが調和の第一歩だと痛感。家族愛のような根源的な価値観は共通でも、「文化」の形は土地の数だけあり、その全てが同様に尊い。まずは自国の文化を知り愛した上で、敬意の念をもって異文化を学ばせてもらうのが礼儀なのではないかと思うに至ったという。

着物姿の誇り高き「日本人である自分」を名刺がわりに異国の懐に飛び込んでいったのだ。汚れても気にしない、洗濯も簡単な綿の着物を着流すだけ。それでも「なんてエレガントな服なんだ!」と話しかけられたり、大事に扱ってもらったりしたそうだ。

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私自身、ニューヨークで着物を楽しみ始めた頃は、着物の形さえしていれば何でもいいと思っていた。「どうせわからないだろうから」と。それが、着物がどれだけの想いの結晶として完成し、伝え続けられているのかを知れば知るほど、できるだけ本物の着物を、今の私にできる一番きれいな形で着たいと思うようになった。離れていても愛してやまない自国の文化を外国の地で発信する。それが自分の役目のようにすら勝手に感じていたのかもしれない。

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でも今回、今まで発信ばかりに気が取られ、相手の文化を理解しようとする肝心な部分が欠けていたかもしれないと気付かされた。ただの自己満足ではなく、異文化を知る「道具」としての着物。普段着物、高級着物関係なく。

草の根の小さな小さな一歩だとしても、着物を着ることが平和への貢献になる。そんな素敵なことを日本から旅してきた29才の若者に示してもらった1日だった。