Nice:ニース
2015-09-07
喉で味わうオリーブオイル

雨の日は、小屋の中での作業になります。小屋はふたつあり、ひとつは収穫したオリーブや、突風を起こす機械がある小屋。拾い集めたオリーブの実には枝葉や土が付いているで、この機械を使ってそれらを吹き飛ばして取り除きます。細かい葉や異物が入っていないかもチェックしながら風圧やオリーブを流して行く速度を調整せねばならず、セリーヌと呼吸を合わせることが必要になります。餅つきの「えいさっ」「ほいさっ」のイメージです。こうして選り分けられたオリーブの実は、翌日新鮮なうちに製造所へ運ばれエキストラバージンオイルにその姿を変えます。

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もうひとつは、出荷前の製品が置いてある小屋。オリーブオイルのタンクには “MEDAILLE D’OR(金メダル) ”のラベルが燦然と輝いています。農産物コンクールConcours General Agricoleで2014年に金賞を取ったそうです。このオリーブイルを容器に入れます。少しでもオイルが容器に付着すると商品として成り立たないので、白い服を着ると必ずシミをつけてしまうわたしは、これを辞退してセリーヌに任せ、最後のラベルを貼る工程を担当しました。「お料理好きでパン好きなやさしい人に買ってもらうんだよ」と、心の中でつぶやきながら心を込めて貼るのでした。

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こうやって生産者側に身を置くと、産物の味わい方もちゃんと知りたくなってきます。そんな中、日曜日の朝にムッシュが試飲会を開いてくれました。数週間以内、1か月前、3か月前に絞り出されたオリーブオイルをそれぞれ小さなカップに入れての試飲。とろみを確かめるためにカップを軽く揺らすとオイルが目覚めるのか、ふわりと香りがたちあがります。そして、小さじ1杯弱程度のオイルを口の中に含みます。一番大きなポイントは、喉で味わうということ。空気を含みながら喉を鳴らして味わうのです。うがいをする時の逆バージョンです。これが意外に難しく、いまだにムッシュのように上手に喉をならせません。

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喉で味わうことで、風味がぐわっと鼻腔にあがってきます。フレッシュなオイルほど、つい最近まで山で育っていたことを感じます。見た目は少し濁りがあり、香りも液体になる前の実の名残があります。そしてあとからピリピリと喉で暴れる強い刺激があります。これがポリフェノール。フレッシュなほど暴れん坊です。

次に3か月、6ヶ月と容器に入ってから時間が経過したオイルも試飲。街のお店に並べられて時間が経っただけあって、都会っぽく変化します。その透明度は上がり、クリーンな香り、そしてピリピリ度は弱まりお行儀よくなります。雑味がなくなり、こちらもおいしいのですが、鮮度が高い方が栄養価も高いようです。でも、どちらも最後には同郷の山で育った同じ“におい”が残るのでした(個人的感想)。

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収穫でオリーブの実と接してから、私のオリーブオイルに対する概念は大きく変わりました。オイルというよりも、香り豊かなエキスだな、と。すっと身体に入ってくるこのエキス、毎日たっぷりパンにつけていただいてます。