美しいものを見ること。それは私たちを幸せにしてくれます。マレーシア・ペナン島のジョージタウンは世界遺産に登録される歴史あるエリア。マラッカ海峡に面することから古くから貿易の拠点であり、英国の植民地時代なども含めそれまでの歴史を物語る住居、史跡がみごとに融合し、残っています。そんなペナンの歴史を語るうえで欠かせないのがプラナカンです。
プラナカンとは交易をきっかけにマレーシアにわたり根付いていった中国系の人たちを指します。彼らは貿易で財をなし、華やかでエキゾチックな独自のライフスタイルを築いていきます。興味深いのはチャイニーズスタイルにマレー、さらには英国などヨーロッパの文化を重ねあわせ、それはそれは贅沢で個性的な暮らしぶりだったということ。その一端を垣間見せてくれるのがジョージタウンにある通称ブルー・マンションと呼ばれる「チョン・ファッ・ツィー・マンション」です。
ここは「東洋のロックフェラー」と呼ばれた実業家の邸宅だった場所で、まさにプラナカン美学が凝縮。真っ青なブルーの外観には中国系らしく風水を取り入れた極彩の意匠がほどこされ、内部にもさまざまな細工がみられます。現在、ゲストハウスになっているので宿泊も可能なほか、毎日、英語でのガイドツアーも行われています。
また、ミントグリーンが目にまぶしい「ペナン・プラナカン・マンション」も必見。ヨーロッパから持ち込まれた陶器やガラス類のアンティーク、嫁入り前の娘たちが花嫁修業にと仕込まれたビーズ細工の靴、クバヤと呼ばれる伝統衣装の精緻な手仕事など。邸宅内にぎっしりと並べられた展示物からは当時の栄華とプラナカン独特の美意識が匂いたち、思わずため息がもれるほどみごとです。
プラナカンは食文化にもその個性を発揮します。ジョージタウンにはいくつものプラナカン料理のレストランがあり、伝統的なメニューを楽しむことができます。プラナカンは別名ババニョニャとも言われます。ババは男性を、ニョニャは女性をさしています。花嫁修業として代々伝わる味を踏襲して作られるのがニョニャ料理。究極の家庭料理だといえます。人気があるのがジョージタウンにあるレストラン「プル・ルマ・ニョニャ・キュイジーヌ」。タマネギや香草などを細かく刻みチャーハンに加えたナシ・ウラム、バンクアンと呼ばれる根菜にイカの細切りを加えたヘルシーなジューフーチャー、魚のすり身をパンダンの葉で炭火焼きする香り豊かなオタオタなど、中国料理にマレーシアらしいココナッツミルクや香辛料、魚介類などを加えているところにプラナカンの文化を感じます。
ジョージタウン以外にもマラッカ、さらにはシンガポールなどにもプラナカンの伝統は息づいています。親から子へ。母から娘へ。華やかなプラナカン文化をたどる旅は、時代を超えて女性の美しさをあらためて見つめるきっかけを与えてくれるかもしれません。
●Cheong Fatt Tze Mansion
●Pinang Peranakan Mansion
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●Perut Rumah Nyonya Cuisine
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