フランスにご挨拶のパリ、語挨拶のヴィシー、ふたつの挨拶を総括すると「語学力はさっパリ」ですが「気分はさっパリ」しました。いよいよ次はファームステイへ。ちなみに(わたしの場合の)ファームステイとは、農園で働く対価として、お金ではなく食事と寝る場所を提供してもらえるという、素敵なステキなステイ法です。フランスには、ワイン、乳製品などパンに合う食材のファームはたくさんありますが、わたしがこだわった食材は、ハチミツ、オリーブオイル。パンに合うのはもちろん、以下3点も満たしているから。
①素材そのものをピュアに味わえる(栄養もたっぷりとれるから)
②常温保存できる(いつも食卓に置いてもらえるし、バッグにも入れてもらえるから。“マイ醤油”的な)
③調味料にもなる(パンの味のアレンジを手軽に楽しめるから)
前述の“ご挨拶”が終ったのが11月。本命にしていたハチミツの養蜂場は収穫が既に終っていて、最後の収穫に人手を募集していたオリーブ農園に無事ステイ先が決まりました。ここで生産者レベルでオリーブオイルのある生活を体験できたのですが、とても大きな収穫となりました。そんな意義あるはじめてのファームステイ、どんなものだったかを紹介させてください。
場所は南仏、プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域のグラース。香水でも有名な土地です。 到着したのは雨の夜。一緒に働く女性セリーヌは翌日到着とのことで、「初日・ひとり・山・夜・雨」という、孤独に陥る五大条件は揃っていて、寂しい長い夜との闘いを覚悟していたのですが、気付いたらたっぷり眠って目覚めた朝でした。
雨があがって空気が澄んだ朝は、いろんなものがはっきり見えます。はじめて見るオリーブの木、 木、木。文字通り森。これらの数えきれない木からオリーブの実を収穫することを思うと、初体験の楽しみと、その労働ボリュームへの体力的不安が沸き上がり、いろんな意味のドキドキが止まらないのでした。
滞在する建物は素焼きの瓦、石造り、サーモンピンクの壁、という典型的なプロヴァンスの家屋。庭に噴水やハーブ菜園、サロンまであって、まさにおとぎ話から飛び出してきたようなお家です。ふんわりした人が住んでいそうですが、実際の農園主のご夫婦は、おとぎ話というよりも民話のカテゴリー。効率化を優先されるとても現実的なご夫婦でした。大きなファームを管理されているだけあります。
毎日の開閉が楽しみのひとつだった窓の木の鎧戸は、オオカミ避けだと思っていたのですが(おとぎ話のイメージもあって)、アルプス地方からの強い寒風“ミストラル”を避けるためだということを少し後から知り、教科書脳ではなく絵本脳の自分にこの先の不安を覚えるのでした。
与えてもらったお部屋は0階(日本でいう1階)で、キッチン・リビングダイニング、寝室、バス・トイ レが揃っています。全ての床がタイル石で、裸足で歩くと気持ちがいいです。寝室のベッドの頭上にはクッションが吊るされています。こうすることで、お部屋の可愛いさがグッとアップするのは新発見です。バスルームにはなぜかベッドが。男性用だそう。カーテンの向こうはシャワー、トイレ、洗面台があります。人と水が行き交うところで眠るのは風水的には避けた方が良いと言われてしまいそうな環境です。「日本の安いアパートにこういう物件がありそうだな」と、意外なところで日本を思い出しました。
いよいよファーム物語(仕事)が始まります。 次回は登場人物、マダムの手料理についてご紹介したいと思います。